双頭のバビロン 下
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双頭のバビロン 上
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世紀末ウィーンに生まれた、貴族の血を引く一組の双子――ゲオルクとユリアン。彼らはある理由から、引き離されて育てられる事になった。 名家の跡取りとして裕福な暮らし、士官学校へと進学したゲオルクは、そこで同級生と決闘騒ぎを起こしてしまい、新大陸へと追いやられる。しかし彼はハリウッドで役者として頭角を現し、ついには映画監督として名を馳せるまでになる。
ヨーロッパ流の本格的な映画を金に糸目をつけずに作り、己を「天才」と称してはばからないゲオルクは、現場からの信頼は厚いものの、製作会社の上層部と揉めることもしばしばで、その将来には多くの波瀾が待ち受けていた。

一方、存在を抹消されたユリアンは、保護者ヴァルターとともにボヘミアの廃城に隠れ住み、そこで高度な教育を受けながら、奇妙な実験を課せられるようになる。後に無二の親友となる少年ツヴェンゲルとの出会いを経て、平穏で幸せな生活を送っていたユリアンは、ある外出先で起きた出来事から、己の出生の秘密と向き合うことになる。

真逆の人生を送っていたはずの双子の運命は、野心と欲望渦巻くハリウッド、そして鴉片と悪徳が蔓延する上海で交錯する。上下二分冊とボリュームたっぷりの長編ながら、先の展開が気になるあまり、一気読みすること必至の傑作ミステリ。並べると一枚絵になるカバーの美しさも併せてご堪能下さい。


(2015年6月5日)




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