男勝りで元気のいい少女茜は、豪商天鵺家の後継ぎで病弱な少年鷹丸の遊び相手として迎え入れられる。
 だが、天鵺家の屋敷での毎日は、奇怪で謎に満ちたものだった。
 立派な家具調度や溢れんばかりの高価なおもちゃに囲まれてはいるものの、権高な祖父、冷淡な父と息子を憎む義母、狂気に囚われた叔母と、家族の愛を知らぬ孤独な少年鷹丸。
 茜が衝撃をうけたのは、それだけではなかった。数々の奇妙なしきたりと儀式、異様なほど虫を恐れる家人、鳥女と呼ばれる、普通の人々には見えない守り神の存在。
 茜がそれらにようやく慣れてきた矢先、屋敷の背後に広がる黒い森から、鷹丸の命を狙って、人ならぬものが襲撃してくる。それは、かつて魔物に捧げられた天鵺家の娘、揚羽姫の怨霊だった。
 自らも命の危機に瀕した茜は、天鵺家の呪われた歴史を知り、一族の負の鎖を断ち切るため、魔物に立ち向かう決心をする。

 ときは明治末期から大正時代の日本。横溝正史を思わせるような、旧家を舞台に、元気で勇敢な少女が心優しいけれど病弱な少年を助けて、何百年も続く呪いを打ち破ろうとする物語。

『水妖の森』で、ジュニア冒険小説大賞を受賞。〈ふしぎ駄菓子屋銭天堂〉シリーズや『送り人の娘』『火鍛冶の娘』『魂を追う者たち』で人気の著者渾身の時代ファンタジー決定版!


(2015年6月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

海外ミステリの専門出版社|東京創元社