今月の本の話題

2016.09.05

野外結婚式に気球が墜落!? そして死体が。〈セーラ・ケリング〉シリーズ最終巻! シャーロット・マクラウド『浮かんだ男』[2016年9月]


気球墜落現場のテントの下から死体が出現!
さらには夫マックスに生命の危機が迫る!?

アガサ賞生涯功労賞作家の大人気コージー・ミステリ



本書『浮かんだ男』はシャーロット・マクラウドが1998年に発表した〈セーラ・ケリング〉シリーズの長編第12作にして、最終巻となる作品です。第1作『納骨堂の奥に』が1979年発表ですから、足かけ20年にわたった物語のフィナーレとなります。

今回セーラは、夫マックスの甥(姉の息子)であるマイクの結婚式の仕切りを任されています。ケリング家の敷地で野外結婚式をおこなうとあって、準備もたいへんなのでした。そんな式当日の朝、セーラほどは忙しくないマックスが家内を見てまわっていると、新郎新婦への贈り物の中に意外な品を発見します。それはケリング一族に代々伝わる貴重な宝でありながら、ある事情から海外に流出したパルール(首飾りなどの宝石セット)でした。失われたはずの宝石が、なぜいまここに?

マックスはセーラを動揺させないため、単身ことの真相を突き止めようとするのですが、謎の男が家に侵入し、結婚式場のテントに熱気球が墜落してくるなど、事件が立てつづけに起こります。しかもそれは一日では終わらず、翌日もおかしなできごとは続き、ついには気球に潰されたテントの下から死体が発見されるのでした。一連の事件に決着をつけ、セーラとマックスは息子デイヴィや愛する人たちとの平穏な生活に戻れるのか……?

いつもながら個性的すぎるケリング一族の面々やビターソーン探偵社まわりの人々など、(会話のはしにのぼる人々もふくめ)レギュラーキャラクターはひととおり登場し、物語に花を添えます。第1作『納骨堂の奥に』の内容に関する言及も多く、書かれるべくして書かれた最終巻という趣があります(「なんと完璧な最終回なのか」とは、解説を書かれた書評家・杉江松恋氏の言)。これまでシリーズを読まれてきたかたは、どうぞお見逃しなく。


セーラが陣頭指揮をとる、義理の甥の野外結婚式は好天に恵まれ、会場のテントに熱気球が墜落したことなど二三のトラブルを除いて、問題なく終了した。だが翌朝、片づけ中に潰れたテントの下から死体が見つかり、家の周囲でも事件が続発。セーラと夫マックスは休むことなく探偵活動に取り組むことになる――ケリング一族ほぼ総出の騒動が描かれる、人気ミステリ・シリーズ最終巻。




アガサ賞生涯功労賞作家のにぎやかで優しい世界
コージーミステリの大定番!
〈セーラ・ケリング〉シリーズ最新作



シャーロット・マクラウドが復活します。

本書『おかしな遺産』はアガサ賞生涯功労賞受賞者であり、コージーミステリを語るうえでは欠かせない作家であるマクラウドが1996年に発表した〈セーラ・ケリング〉シリーズの長編。いろいろありまして、原書刊行から19年たっての翻訳となりました。……たいへんお待たせしました。

簡単に説明しますと、本シリーズはアメリカのボストンを舞台にしたコージーミステリです。セーラは一族郎党がこの地にうじゃうじゃいるケリング家出身の女性で、あれこれあった末に再婚した美術品専門の探偵マックス・ビターソーンを助け、探偵事務所の手伝いをしています(マックスとのあいだに長男デイヴィも生まれ、現在の名前はセーラ・ケリング・ビターソーンとなっています)。

ケリング一族はほんとうに人数が多く、毎回その中の誰かしらがセーラにトラブルをもたらすのですが、本書もその例外ではありません。セーラが義理の従姉アンに夫マックスの名代として連れていかれたのは、かつて結婚前の夫妻がそこで起きた事件(※第3作『盗まれた御殿』)に巻きこまれた、通称「御殿」ことウィルキンズ美術館の、新任ほやほやの管財人委員会会長がひらいた昼食会でした。会長の意地悪な質問にもうまく対応し、その場はなんとか切り抜けたのですが、その後、今度は美術館の中庭で人が死んでいるという知らせがはいります。

被害者は、先の事件で顔見知りとなった画家のドロレスでした。翌日、セーラは自分が彼女の遺言執行人に指名されていることを聞かされます。そこまで親しいつきあいはなく、単なる知人、顔見知りにすぎなかったドロレスがなぜ自分を? 不審に思いつつ、ドロレスの部屋で見つけた鍵で銀行の貸金庫を開けにいくと、そこには思わぬ「もの」がはいっていました……

ドロレスの事件と前後して、怪しい車につけねらわれたり、探偵事務所が何者かに襲撃されたりと、セーラの身辺にも剣呑な動きが起きます。それらと貸金庫に眠っていた意外な「もの」とはどんな関係があるのか……? 夫マックスが国外にいるため、ケリング一族や友人たちの力は借りつつも、基本的には単身奮闘することになるセーラ。その活躍を、どうぞお楽しみに。

本書巻末には、本シリーズの大ファンである書評家・大矢博子さんによる解説がついています。これさえ読んでおけば既刊を知らないかたでも『おかしな遺産』を楽しめるまとめの文章になっておりますので、安心して手にお取りください。

そうそう、その解説の末尾と、帯の裏には重大な「お知らせ」が書かれていますので、書店で見かけた際はぜひ確認してみてくださいね。


盗まれた名画を捜し海外出張中の夫マックスの留守を預かるセーラのもとに、夫妻にとって因縁浅からぬ「御殿」ことウィルキンズ美術館にて、またも変死事件が起きたとの報が入る。被害者は顔見知りの画家ドロレスだった。その翌日、セーラはひとり事務所にいたところを襲撃され、さらに自分が彼女の遺言執行人に指名されていることを知る。美術館一筋だったドロレスはなぜ殺されたのか? 古都ボストンを舞台にした人気シリーズ最新刊!

(2015年6月5日/2016年9月6日)




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