ニューヨークタイムズ・ベストセラー。
全米を沸かせた異色の青春ミステリ


ジャズは忠実な親友と可愛い恋人に恵まれた、平凡な高校生だ――ひとつの点をのぞいては。それはジャズ の父が21世紀最悪と言われた連続殺人犯で、ジャズ自身幼い頃から 殺人者としてのエリート教育を受けてきたこと。彼が住む田舎町で殺人 事件が発生、ジャズはそれが連続殺人だと主張するのだが……。

怪物の息子として生きるということがどういうことかを教えてくれる、最高のスリラーである。残虐で緊迫感に満ちた、大人の読者の期待に応えられる作品だ。(パブリッシャーズ・ウィークリー)



読者モニターの皆様の声

青春ミステリと呼ばれるものは数あれど、こんな変化球を投げて見せる青春ミステリはそうそうないと舌を巻きました。これまでの探偵はその観察眼や知力で犯人を追いつめてきましたが、今作の主人公ジャズは、なんと殺人鬼としての英才教育を受けた経験をもとに、殺人鬼にじぶんを重ねて犯人を追うというのです。そこにジャズの、ひとを簡単に殺せてしまう己への深い慟哭が重なるとあれば、ただシリアルキラーを描いた作品とは一線を画します。スリリングでありながら、恐ろしいだけの小説とは違う趣があるのです。
(30代女性)

いやはや、読みやすい訳(とくにジャズの心理描写や会話描写の小気味の良さ!)も相まってか、スゴい勢いで読んでしまった。読み始めてからほぼ栞を使うことなく、もう先が気になって気になって食事中に読み、風呂に持ち込み、一気読み。一見爽やかな“青春ミステリ”に釣られて読むと、良い意味で裏切られる圧倒的疾走感のサスペンススリラーだった。そう、この小説の読んでいて気持ちのいいところは、ジャズやハウイー、コニーのティーン感溢れる“疾走感”にあると言えるだろう。

 読みやすく、先を急ぐ指が止まりませんでした。警察に幾度も撥ね返され、そのたびに疲れを知らない若さと熱量でその扉をこじ開けたジャズが、正義の探偵ではなく殺人鬼により近いという倒錯したストーリーは青春ミステリというには凄惨すぎる展開ですが、ジャズとハウイーそしてコニーの三人の大人になる直前の若さに救われました。
(?代女性)

 連続殺人が起こり恐怖と緊迫感が覆う物語の中に、親友や恋人との絆、少年の成長という「青春」の要素が描かれ、単なるシリアルキラーを題材とした小説とは一線を画しています。主人公が連続殺人犯の父の教えを受けて育った少年というのもユニーク。
驚愕の展開の連続ですが、最後にはタイトルの「さよなら」が力強くも哀しく響きます。
(20代女性)

 この物語の根底にあるのは「父親のようにはなりたくない」という反抗心だと思いました。殺人事件を捜査し解決できる能力を持っているけれどその能力をくれたのが父親、という葛藤に苦しみながら親友や恋人に助けられ、克服しようとする主人公ジャズの成長が感じられました。この葛藤を乗り越えたジャズの更なる活躍に期待しています。
(20代男性)

 反抗期って,親殺しの時期。心のうちにある親(の価値観)を殺し自分を作っていく時期だなということを改めて味わわされた作品です。連続殺人犯に殺人のための英才教育を受けて育った少年が主人公ですが,心のうちにある親から施された価値観を自分の手で壊し,成長していく様は,どんな人も通る反抗期そのものです。世間に出ていき,親の価値観と世の中の価値観とのギャップを味わい,修正を施し,生きていく術を身に着けていく。通ってきた道のりは異常でも,成長していく過程は実は普遍的なものだなと……推理小説としてより少年の成長小説として読んでいました。
(40代女性)

 大リーグボールは投げないけど、
親父のスパルタが半端じゃない。
男子2人に女子1人だけど、
ファンタジー(ハリーポッター)
よりもリアル。
ダークサイドに行かないよう
これからも見守りたいので、
シリーズ化を希望します。
(40代男性)

 連続殺人犯を父にもち、幼いころから殺人鬼の英才教育を施されてきた…そんな主人公ジャズの〈特異な〉設定だけでこの本の映画化権は買い!
その後のストーリーはどう進むのかと思ったけれど…原題「I Hunt Killers」の意味が判明する終盤、いい意味で裏切られました(こりゃ私費でも買いだわ)。
(40代女性)

 21世紀最悪とも言われる連続殺人犯の父から殺人の英才教育を受けてきたジャズが、親友のハウイーと恋人のコニーを通じて内なる殺人への衝動を抑えようとする姿には、思わずしっかり自分を保ち、その能力を活かして新たに現れた連続殺人犯を追えと応援したくなるのと同時に、親友に対する信頼や、恋人に対して自分の真実の想いを自覚する様子に青春小説らしい清々しさと切なさとを感じさせてくれた。
 しかし、ジャズが怒りに駆られた時には逆にその衝動を解放する姿を期待してしまったのも事実で、主人公のジャズだけではなく読んでいる自分自身が内に隠してきた“怪物”の存在に気付かされた。
(40代男性)

これは主人公ジャズの、色とりどりのインクで書かれた手記であり履歴書であり果たし状でありラブレターだと思いました。
ジャズはどんなインクの色も出せるペンのよう。
父を思い出すときは血の赤。G.ウィリアムと喧嘩の時はブルーグレー。聡明な恋人コニーの前ではピンク。
だけどふとしたときに全ての色が混ざり合ってしまう。濁った色に苦しむ。
それをどす黒くも、薄れさせることもなく。ラストでジャズ唯一の鮮やかな色にしてみせた著者の筆力!しびれました
(30代女性)

 ジャズが心で、口で繰り返す「人は大事だ。人は本物だ」という言葉、ビリーが記憶の中で繰り返す「おれたち」という言葉。この二つの間は遠くて近い。
ジャズにとって心から大切な親友のハウイーと恋人のコニー。彼らがそばにいてさえ、シリアルキラーのビリーの声は頭から離れてはくれない。ビリーの呪縛はそれほどに強い。だからこそ殺人鬼として教育された記憶を正しいことに使おうとあがくジャズの心の戦いはとても惹き込まれる。
震えるほどの非情な教育には鳥肌がたち、容易に彼を解放してはくれないだろうと理解せずにはいられない。
自らの血を嫌悪し恐怖するジャズ。
田舎町ロボズ・ノットで起きたこの連続殺人事件、シリアルキラーの出現はジャズの心の底から一体何を掘り出したのか。
読み出したら止まらないこの物語を、彼の心と共に駆け抜けて欲しい。
(20代女性)

 主人公が事件を通じて大人になっていく成長譚であるのだけど、
なにせ連続殺人犯の息子であるので、置かれた環境はむごく暗い。
ただ、親友・恋人・父を捕えたがその後を気にかけてくれる保安官と、
とりまく人間関係の暖かさが闇落ちを防いでくれている。
ミステリ好きとしては事件を解決すべくの手がかり調査や推理を聞かせて欲しいと思いつつ、青春小説好きとしては事件なんかいいから幸せに過ごしてくれよと思ってもしまいました。
常にトラウマとして襲い掛かる連続殺人犯の父親の影があまりに重く、
読後感も決して100%爽快ではありませんでしたが、読み始めてからは一気読み。
最後できれば別の展開を期待しつつも、主人公の状況・取った行動での決断の中での最善手だろうから見守るしか仕方ない。って、やっぱり成長譚ですかね。はい。
(30代男性)

 数年前まで“殺人”を悪だと知らず、殺人スキルを持つ少年。
ヒーローっぽくない探偵役で新しかったです。
普通のミステリーなら、もう少し安心感を持って読めるんですが、主人公の不安定さにハラハラしっぱなしでした。
(20代女性)

 青春とは大いなる序章である。これは「はじまり」に過ぎない。
読み終わったとたん、こんな言葉が頭に浮びました。
犯罪がらみの青春小説というので、最初は『ヴェロニカ・マーズ』(TVドラマ)みたいな作品なのなか、と思ったのですが、半分当って、半分外れていました。また、天才倒錯犯罪者が出るからといって『羊たちの沈黙』を思わせるような展開になってないところも高評価です。
「シリアルキラー」をタイトルにするだけあって、殺人の描写はなかなかハードです。主人公のジャズ君の、正真正銘の天才倒錯殺人者である父親との関係だけでなく、祖母との、そして母親との、とにかくこんなんじゃやってられない関係に、つい涙しそうになりました。でもジャズ君は親友に恵まれ、彼女だっています。とくに彼女は強い。あんな彼女がいて、ジャズ君は幸せです。
思い返せば、自分も青春時代は莫迦でした。今も、かもしれませんが……
シリアスな作品でありながら、ジャズ君も、親友のハウイー君にも、若者らしい莫迦さ加減があって、そういうところがこの作品の魅力です。 (40代男性)

 読み始めてから、一気に物語に引き込まれます。父親が何を考えて殺人教育をジャズに施したのか、街で起こる事件と重ね合わせ、淡々と述べられる描写がかえって恐怖感を煽ります。救いなのはどんなことがあっても、けして見放さない2人の存在。潜在的な殺人者だと自認するジャズにとって守りたい、愛する人がいるのは、父親と大きく異なる点で、強みでもあり弱みともなりえます。話の最後は次の話も読みたいと思わせる、強い引きがありました。
(30代女性)

 とても刺激的で面白かった。そもそもの着眼点が素晴らしいけど、そのネタだけに頼るわけではないところが素晴らしい。キャラクターが立っているし、文体も瑞々しいし、続編の翻訳が今から待ち遠しいです。
(40代男性)


(2015年5月8日)




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