満座のオークション会場で毒殺事件!
優美な中国陶器やピカソのスケッチが彩りを添える難事件
女性鑑定士が主人公のアンティーク×謎解きシリーズ



アメリカはニューハンプシャー州の港町ポーツマスで、アンティークショップ〈プレスコッツ〉を営む腕きき鑑定士のジョシー。ある日、彼女は自分の店をチャリティイベントのオークション会場に提供することになります。しかし、盛会となった催しのクライマックス、いざ落札者を発表するという段になって、主催団体の代表の女性がワインを飲んでそのまま絶命してしまいました……!

ジェーン・K・クリーランド『落札された死』は、このようにショッキングな発端から始まります。自分の店が殺人現場となったのもさることながら、被害者と同じテーブルに座ってワインを飲んでいたことが、ジョシーをとてつもなく怯えさせます。はたして犯人の狙いは被害者その人だったのか、それとも自分だったのか……?

以前、家財まるごとの鑑定を頼まれた屋敷の老富豪が殺された事件で容疑者扱いされた苦い経験も手伝って、今回もジョシーは自力で犯人を突きとめ、心の平安を取り戻そうとします(老富豪殺害事件の顛末は、シリーズ第一作『出張鑑定にご用心』にあますところなく記されています)。

さらには今回、ジョシーが以前働いていたニューヨークの店を去る原因となった事件についても詳細が語られます。その事件で刑に服していた元上司が出所していたことを知り、毒殺事件との関連に頭を悩ませるジョシー。頼りになるはずの恋人の警察署長タイが、病に伏した親戚を訪ねて不在の中、徒手空拳で事件に立ち向かうジョシーは無事真相へと到達できるのでしょうか?

今回も中国製陶器のチュリーン(蓋つきスープボウル)やピカソのスケッチなど、多様なアンティークのトリビアを作中にちりばめ、事件以外の点でも読者を楽しませる作風は健在です。この巻から読んでも問題はありませんので、ぜひお手に取ってみてください。

ジェーン・K・クリーランド『落札された死』は、5月22日発売です。


チャリティイベントの席上、主催の女性が毒入りワインを飲んで死んだ。犯人の標的は被害者当人か、それとも会場を提供したジョシーか。彼女が前の店を辞める原因となった事件で服役していた元上司の出所との関連は? 恋人の警察署長タイが不在のため、ジョシーは単身事件に立ち向かう。満座の中で、いかに犯行はなされたのか。女性鑑定士が主人公のアンティーク×謎解きシリーズ。


(2015年5月8日)




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