ミネット・ウォルターズによる渾身の心理サスペンス『悪魔の羽根』をお届けいたします。

* * * あらすじ * * *

2002年、シエラレオネで5人の女性が殺害された。元少年兵3人が起訴されるが、記者コニーはイギリス人のマッケンジーを疑っていた。2年後、バグダッドで彼に遭遇したコニーは拉致監禁されてしまう。解放時、彼女はほぼ無傷なうえ曖昧な証言ばかりで監禁中の出来事を警察に話さない。何を隠しているのか?

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 本書は著者が書き上げた11作目の長篇になります。過去の作品とくらべても、かなり謎めいたお話です。主人公はロイター通信社に勤める女性記者のコニー・バーンズ。彼女は西アフリカのシエラレオネで育ち、戦地特派員としてさまざまな国を取材しています。

 本書はコニーの一人称で語られるのですが、まず第一に、拉致監禁された彼女が解放時にほぼ無傷で、警察にも曖昧な証言ばかりを語るのはなぜか、という謎があります。語り手である彼女が何かを隠していることで、とてつもない緊迫感と不安感が生まれています。この緊張は、心臓をつかまれるような衝撃のクライマックスまで途切れることがありません。

 そして舞台が中東からイギリスにうつり、コニーが美しい村にたたずむ古びた屋敷に隠れ住むようになってからは、小さな村での人間関係のきしみがもたらす、あらたな謎が提示されます。それから、読み応えたっぷり、白熱の推理ディスカッションが展開されます。狭い地域社会でささやかれる噂話や偏見がかかわってくる謎に、デビュー作『氷の家』を連想される方も多いのではないかと思います。

 本書は、英国ミステリの女王と言われるベテラン作家による巧みなサスペンスと、謎解きの妙味を堪能できる渾身の一作です。5月29日ごろ刊行の『悪魔の羽根』をどうぞお楽しみに。

* * * 書評より * * *


本書を超える心理サスペンスはまず現れない。……ミネット・ウォルターズの最高傑作だ。――「セインズベリー・マガジン」

心臓をつかまれるような衝撃のクライマックスまで緊張感がとぎれず、主人公に共感せずにはいられない。――「サンデー・テレグラフ」

善と悪、ふたつの面を持つ印象的な登場人物たちが織りなす、重層的な物語だ。――「バーミンガム・ポスト」



(2015年5月8日)




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