エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範)の学生(=ノルマリアン)のエドゥアール・ルイは、なぜ、エディ・ベルグルという名を捨てたのでしょう?
 そもそも、エディ・ベルグルという名は何なのでしょう?

 ベルグルという苗字は、美しい口、美しい顔、いかした面(ツラ)という意味を持つ、きわめて珍しい苗字なのです。その名を耳にすればフランス人は、ふき出すか、「えっ?」と訊き返すか……というような。
 そしてエディ。エドゥアールだからエディなのか、と思うとそうではなく、彼の父親が始終テレビを見ているテレビ狂で、夢中になって見ていたアメリカのテレビドラマの登場人物からとった名なのでした。
 北フランスの貧しい村には、そんなアメリカ風の名前が多いとか……。

 極貧の村の貧困家庭の息子エディは、子供時代からなよなよして、声も高く、姉の服に興味を持ち、芝居をするのが好きでした。男は強くなくてはいけないし、少年ならサッカーを楽しまなければならないという世界で、そんな彼は異分子でしかありませんでした。
 学校での壮絶ないじめ、そして、いとこやクラスメイトたちとの同性愛体験。しかもその出来事をもとに、彼はさらにいじめられることになったのです! みんな一緒だったのに……。そして同性愛説を打ち消すための女性への接触……何もかもが滑稽なほど悲惨でした。

 彼はそんな世界から逃げ出すことを決意しました。家族を捨て、村を捨て、そして自らの名前をも捨てて、エドゥアール・ルイとなったのです。

 すべてを捨てた彼は何を失い、何を得たのでしょう?
知的エリート〈ノルマリアン〉として、今、パリでフランス大学出版局の叢書の編集代表を務めるまでの活躍をしている彼は、これからどこへ行くのでしょう?
 この驚くべき私小説(オートフィクシオン)でお確かめください。

 装丁を手がけてくださったのは中村聡さんです。カバー写真の少年は、ちょっと似ていますが、エドゥアール・ルイではありません!

 本国の書評より***********************************************

◇恐ろべき物語の力、その衝撃たるや、激しい集中砲火を浴びたようだ。
――「ル・パリジャン」紙

◇読み終えて本を閉じると、ただ呆然として、息を呑んでいる自分に気づかされる。
――「ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」誌

◇驚くべき力、驚くべき真実 ――アニー・エルノー

◇本書は文学界に現われた忘れがたい超新星だ。 ――「リール」誌


(2015年4月6日)




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