今月の本の話題

2014.11.05

2015年トップを飾るイタリア発の超大作『アルタイ』に注目だ! ウー・ミン『アルタイ』[2014年11月]

1039_L.jpg 敗者の視点から眺めるレパントの海戦。
ヴェネツィア共和国とオスマン帝国の世紀の戦いの裏に、裏切りと、暗躍する間諜と、ロマンスあり。
(全国紙ラ・レップブリカの文化欄より)

 2014年に刊行され話題を呼んだ歴史エンターテインメント『Q』、その著者である作家グループルーサー・ブリセットがメンバーを変え、名前を変え10年ぶりに刊行した新たな歴史超大作が『アルタイ』
 日本では早くも2015年に登場。『Q』をはるかにしのぐスピーディな展開、登場人物の魅力、面白さ、読めば虜になること請けあいです!

■著者ウー・ミンについて
 世界各国で創作活動を続けていた数多くのルーサー・ブリセットが、当初の予定通り1999年12月31日に「SEPPUKU」をして、ルーサー・ブリセット・プロジェクトは幕を閉じた。翌日、明けて2000年1月1日、プロジェクトの核であり、『Q』を発表した4名のイタリア人が、さらに1名を加えて新たなグループ「ウー・ミン(Wu Ming)」を結成。本著『ALTAI』は、このウー・ミンの共著である。

 ウー・ミンは中国語で、発音の仕方によって二つの意味がある。第一は「無名」。名無しということだ。ここには、前プロジェクトから引き続き、「作者名が作品の価値を決める」という昨今の風潮を拒否するという意思が込められている。また中国では、民主主義や言論の自由を主張する人が何か署名をする際に、この「無名」を使うという習慣があり、彼らに対する敬意も含まれている。第二の意味は「伍名」、五つの名前、すなわち「五人」ということだ。

 そんな新たなペンネームを引っさげて、彼らは執筆活動を再開(?)し、2014年の時点で、合計6冊の小説を執筆している。同時に、各人も個別で作品を発表しているが、その際には「ウー・ミン1」「ウー・ミン2」……というペンネームが使われる。とはいえ、彼らの実名も今ではちゃんと公表されている。本人たち曰く、「ポリスというバンドのメンバーが警察官ではないのと同じ」だそうだ。

 2008年9月、ルーサー・ブリセット時代からメンバーだった「ウー・ミン3」が脱退。現在は4名で活動を続けている。

■本著『ALTAI』の誕生まで
 1999年に出版された『Q』から10年後の2009年。イタリア本国で『ALTAI』が発表された。『Q』と登場人物が重なるという前評判から、読者は『Q』の続編を期待した。だが、作者たちは「これはQ2ではない」と公言し、続編と呼ばれることをかたくなに拒んだ。「『Q』の3人の登場人物を16世紀の地中海という舞台に置き直しはしたが、これはまったく別の物語である」。

『Q』をはじめ、その後の作品も大成功を収め、イタリア本国ですっかり有名になったウー・ミンだが、2008年にメンバーひとりを失った喪失感は大きかった。このままでいいのかと自問を続けた彼らは、いつもの円卓を囲んで話し合った。円卓は、『Q』の最初の原稿料を使ってIKEAで買ったものだ。そして決めた。「原点に帰ろう」。つまり、この作品を書くことは作者たちにとって、ひとつの「リセット」、ある種の「リハビリ」だったのだ。

 手探りで始まった執筆作業は難航した。共著というかたちをとっている彼らは「最終的に誰か一人でも気に入らなければ原稿はボツ」という厳しい姿勢を貫いている。本著『ALTAI』も、当初、主人公の身分設定は“潜入者”だったが、全編の3分の1が仕上がった時点でそれを変更。ゼロからすべてを書き直した。彼ら曰く「実は僕らにはもうひとり、内緒のメンバー“ウー・ミン6”がいる。ごみばこだよ。誰よりも冷静で、決して声を荒げたりしないけど、彼の決定は絶対、最終決定なんだ」。

(2014年11月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

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