今月の本の話題

2016.06.06

怪盗ニックは、あなたの時間も盗みます! エドワード・D・ホック『怪盗ニック全仕事3』[2016年6月]


価値のないもの、変わったもの……
そして、あなたの時間も盗みます!

単著初収録&本邦初訳のエピソードを
多数収録した傑作シリーズ第3巻



「価値のないもの、もしくは誰も盗もうとはしないもの」専門の怪盗ニック・ヴェルヴェット。その活躍を集成する文庫版全集も、おかげさまで第3巻をお届けできるはこびとなりました。

本書『怪盗ニック全仕事3』の特長はなんといっても、単著初収録(これまで雑誌やアンソロジーに掲載されたきりだった作品)や本邦初訳(正真正銘日本初登場作品)のエピソードが大半を占めること。全14編中、じつに10編がそれに該当します。

つまり本書のほとんどの短編を、読者の「あなた」は初めて読むはずなのです。これをお得といわずしてなんと呼びましょう。もちろん、短編ミステリの達人ホックのこと、作品の質はどれも紹介済みのものと同様、きわめて高いレベルを維持しておりますのでご安心を。

ニックが日本で仕事をおこなう「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」(単著初収録)、運悪く足首を骨折したまま注文の多い依頼に挑戦する「感謝祭の七面鳥を盗め」(本邦初訳)、「政府に頼まれている」とさんざん言い訳してきたニックが本当に政府の依頼で盗みを働く「赤い風船を盗め」(本邦初訳)など、一編また一編と読みすすめるうちに気づくでしょう……「あなた」の時間がニックに盗まれていることに。その盗まれた時間を、存分に楽しんでいただければと思います。

『怪盗ニック全仕事3』は6月22日発売予定です。


盗みの対象は価値のないもの、誰も盗もうとはしないものに限定されるが、一度引き受けた依頼はどんな困難なものでもやりとげるプロ中のプロ――それが怪盗ニッ クだ。本書にはそんな彼が日本を訪れる話や、足首を骨折しながらも盗みに挑む話、政府の依頼で動く話など、本邦初訳や単著初収録の作品を多数収めた。短編の魅力がふんだんにつまった傑作シリーズ、文庫版全集第3弾。




どんなものでも盗んでみせます。
――ただし、価値のないものに限り。

盗むものが不明な話や何も盗まない話など
バラエティ豊かな依頼が舞いこむ第2巻



「価値のないもの、もしくは誰も盗もうとはしないもの」のみを標的として依頼を受ける怪盗ニック・ヴェルヴェット。そのすべての活躍を集成する文庫版全集の第2巻をお届けします。

今回この『怪盗ニック全仕事2』に収録されるのはシリーズ第16作から第30作までの15編。例によって「安物のカッコウ時計」や「アパートのゴミ」、「裁縫に使う木製のたまご」などお馴染みの(?)奇妙な依頼はもちろんのこと、シリーズ中で三本の指にはいる変化球ものの短編が三つともすべてはいっているという、とてもお得な一冊になっております。具体的にいいますと、自分が何を盗めばいいのかわからないまま盗みにいく「空っぽの部屋から盗め」、ニック自身が盗まれる(誘拐される)ことになる「怪盗ニックを盗め」、そして特定の日に何も盗まないことを依頼される「何も盗むな」。……まったく、どうしてこういう変な話を考えつくのでしょうか。

ほかの収録作品でも、意表を突く盗みの手段、ニックに盗ませる依頼人の意外な動機など、短編ならではの切れ味鋭いアイディアを楽しむことができます。読むのはこの巻からでも、もちろん1巻からでも大丈夫、ホックの名人芸をご堪能ください。

『怪盗ニック全仕事2』は8月29日発売予定です。


映画の没フィルム、サーカスのポスター、アパートのゴミ……誰も盗もうとは思わないものだけを、依頼により盗むユニークな怪盗ニック・ヴェルヴェット。本書にはお馴染みの奇妙な依頼のほか、何を盗むのか不明な話、ニック自身が盗まれる話、何も盗まないよう頼まれる話など、シリーズ屈指の変化球をそろえた。短編の名手ホックが生み出した、比類なき怪盗の文庫版全集第2弾。




価値のないもの、盗みます。
短編ミステリの巨匠随一の人気キャラクター、
シリーズ全短編を集成した文庫版全集第1巻!



生涯に900編を超える短編ミステリを書いたエドワード・D・ホック。50年以上に及ぶ作家生活の中で、多種多彩なシリーズキャラクターを生み出したことでも知られていますが、その中からこれまで創元推理文庫では、不可能犯罪ばかりを扱うことになる医師〈サム・ホーソーンの事件簿〉と、オカルトがらみの事件を得意とする謎の老人〈サイモン・アークの事件簿〉の2シリーズを刊行してきました。

そしてこのたび、三人目の人気者に登場いただくこととなりました。おそらく、数あるホックのキャラクターの中でも一二を争う知名度を誇る彼の名は――ニック・ヴェルヴェット、通称怪盗ニック。

「怪盗ニック」と聞いて「ああ、あの」と頷かれるかたもいらっしゃいましょうが、初めて名前を目にしたという読者に向けて説明しますと、彼はその名のとおり泥棒です。依頼を受けてものを盗む、プロフェッショナルな犯罪者ですが、彼が唯一無二の怪盗である理由は、盗む対象が「価値のないもの、もしくは誰も盗もうとはしないもの」に限られる、という点にあります。

シリーズ第1作から第15作までの15編を収録した本書『怪盗ニック全仕事1』を例にあげると、彼が盗んでくれと依頼されるものは「動物園にいる生きた虎」「豪邸の庭にあるプールの水」「ゼンマイ式のおもちゃのネズミ」「ビルの外壁に取りつけられた会社名の文字」「すでに終わった芝居の切符」などなど……なんともユニークなものばかり。ちなみに表紙には盗みの標的となるアイテム15点がすべて書かれていますので、気になるかたは数えてみてください。

怪盗ニックものの短編集は、過去にも他社から刊行されたことがありますが、今回の本はそれらと異なる点がいくつもあります。最大のウリは、全部で87編あるシリーズ作品を、発表順に並べ替えてすべて収録すること。未訳のものはもちろん、これまで雑誌やアンソロジーでしか読めなかった短編(1巻では「シルヴァー湖の怪獣を盗め」が該当)も含まれます。発表順に読むことで、ニックを取り巻く環境の変化や、作風の変遷もよりヴィヴィッドなかたちで感じていただけることでしょう。

また、雑誌等では異なる訳者が訳していた作品も、今回収録するにあたり、ひとりの翻訳者で翻訳を統一しました。ホックの訳者といえばこのかた、の木村二郎先生です。

怪盗ニックものの魅力は、「意表を突くターゲットをニックがいかにして盗むのか」というハウダニットと、「そもそも依頼人はなぜそのようなものを盗ませるのか」というホワイダニットが、ひとつの作品の中で同時に楽しめる点にあります(場合によっては盗みに付随して起こる殺人事件の犯人は誰かという、フーダニット要素も追加されます)。一編ごとに盗むものの突飛さで驚かせ、話がどういった方向に転がるかを楽しめる、なんとも贅沢なシリーズなのです。完結までのあいだ、どうかおつきあいください。


人から依頼されて動くプロの泥棒、怪盗ニックが盗むのは「価値のないもの、もしくは誰も盗もうとは思わないもの」だけ。そんな奇妙な条件にもかかわらず、彼のもとには依頼が次々舞い込んでくる。ターゲットはプールの水、プロ野球チーム、恐竜の尾……それらをいったいどうやって盗む? 短編の名手ホックが創造したユニークな怪盗の全仕事を発表順に収録した文庫版全集第1弾。

(2014年11月5日/2016年6月6日)




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