今月の本の話題

2014.10.07

謎めいた「魔女」への願いに端を発した悲劇の真相とは? 連作形式で送る、著者渾身の力作。 友桐夏『裏窓クロニクル』[2014年10月]

『星を撃ち落とす』『春待ちの姫君たち』など、柔らかさと鋭さを併せ持つ少女の心理を、鮮烈に描く名手・友桐夏の新境地です。本作のキーワードは、「願い」。

 舞台は現代の日本。「私」による独白から物語は幕を開けます。数々の黒い噂がつきまとう、いわくつきの一族・篁(たかむら)。私はその当主の義理の娘であり、愛人の連れ子ということで義理のきょうだいから蔑まれています。
 ある日、私は篁を狙った事件の解決を依頼しに、何でも願いを叶えてくれるチカラを持つという「教会の魔女」に会いに行くことになります。「教会の魔女」と呼ばれる謎めいたこの女性も篁の人間なのですが、ある理由により一族中から爪弾きにされており、私は自分と似た境遇の彼女に親近感を抱きます。
「教会の魔女」と面会後、まもなく事件は解決したかに思われました。ところが、実は私が魔女に頼んだのは別の願いでした……。

 私が願ったこととは何だったのか。謎に包まれた魔女は何を企んでいるのか。連作形式の物語は、私をはじめとする魔女に願いを告げた少年少女と、彼らに関わった人々が巻き込まれた悲劇を次々と描いていきます。教会で、学校で、山間の豪華ホテルで、それぞれを中心に起きた事件の真相とは? 

 30年にわたる人々の年代記を描いた、著者渾身の力作です。勝本みつるさんの可憐なオブジェを配した装画と、柳川貴代さんによる美しい装丁とともにどうぞお楽しみください。

(2014年10月7日)




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