今月の本の話題

2014.09.05

明るく静かなヨークシャーの屋敷で何がおこったのか? ――ドイツの国民的作家、シャルロッテ・リンクが登場! 『沈黙の果て』[2014年9月]

沈黙の果て 下
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 シャルロッテ・リンクといえば、日本では、何年か前に『姉妹の家』という作品が集英社文庫で出たことを覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、日本ではほぼ知られていない作家ではないでしょうか。
 しかし、ドイツ本国では、出すもの出すもの、すべてがベストセラーになる国民的作家とも言うべき存在です。
 そういえば、昨年小社刊の『夏を殺す少女』のアンドレアス・グルーバー氏が来日した際、奥様に夫君以外にお好きなミステリ作家は? とお尋ねすると「シャルロッテ・リンクは必ず読むわ」という言葉が返ってきましたっけ。
 そう、ドイツではそんな存在なのです。フランスでも翻訳が次々に刊行され、〈心理サスペンスの女王〉などと呼ばれています。

 そんな彼女は、よくイギリスを舞台にします。今回の舞台もイングランドのヨークシャーにあるスタンバリー・ハウスという古い屋敷。登場人物のひとりが祖父から相続したその屋敷に、仲のよいドイツ人の三家族が集まり楽しい休暇を過ごしていたところ、謎の男が現われ、自分にも屋敷の相続権があると言い出す。

 三組の家族というのは、弁護士夫妻と二人の娘、大学教授と再婚したばかりの獣医の妻と前妻の娘、カリスマ・セラピストである心理学者と過食症の妻。三人の夫たちは学生時代からの友人で、その結束は異様なまでに固く、休暇と言えば必ず集まって過ごすのでした。

 これは、そんな休暇中に起こった凄惨な事件の物語です。
 散歩から戻った、獣医のイェシカが発見したのは、屋敷にいた五人もの惨殺死体。凶器は同じナイフ。
 いったい何が起きたのか?
 仲の良い三組の家族は、その幸せそうな外見の下に、それぞれに問題を抱えていました。親子間の、夫婦間の。そして、三人の夫たちの濃密な結びつきのかげには恐るべき秘密が……。

 本書はドイツで120万部(!)のベストセラー。問い合わせて返ってきたその数字にはビックリ、でした。

◇シャルロッテ・リンクは1963年生まれの女流作家です。
大学入学前、19歳で歴史小説でデビューし、その後、ミステリを次々に発表するようになりました。
1999年の『姉妹の家』で、初めて「シュピーゲル」誌のベストセラー・リストに入り、以来、刊行する作品がことごとくベストセラーになるという、ドイツでは知らない人がいない作家として活躍しています。

(2014年9月5日)




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