今月の本の話題

2014.09.05

PWA生涯功労賞の著者が描く警察小説の大作。ロバート・クレイス『容疑者』[2014年9月]

「置いていかないで! もどってきて!」
 ロス市警の刑事スコット・ジェイムズは、市警のエリート警備中隊“メトロ”への異動を前に、相棒のステファニーとパトロール中、街で銃撃事件に遭遇する。銃弾はふたりを襲い、ステファニーは死亡、スコットも重傷を負った。
 事件から九ヶ月半、犯人はいまだ捕まらず、満身創痍で後遺症に悩まされるスコットの耳に相棒の悲痛な叫びだけがこだまするばかり。
 事件前の決定どおり“メトロ”へ配属となったスコットはそこで、新たな相棒マギーに出会った。マギーはアフガニスタンに従軍し、そこでスコットと同様大切な相棒を失った大型の雌のシェパード。マギーもまた、相棒を失った爆弾テロのトラウマに悩まされる身だった。大きな音に怯える警察犬がなんの役にたつ?
 だが、そんなマギーとコンビを組んだスコットは、互いの傷とトラウマを克服しつつ、自分とステファニーを襲った銃撃事件を調べるのだった。

 心に傷を負ったひとりと一匹の新たな旅立ち。アメリカ私立探偵作家クラブの生涯功労賞受賞の著者、渾身の大作登場!

 ロバート・クレイスは〈エルヴィス・コール・シリーズ〉〈ジョー・パイク・シリーズ〉などで私立探偵もので人気の作家。
 本作は彼には珍しい本格的な警察小説。ベテラン作家の新たな挑戦として注目の作品です。
 もうひとつ、本作の読みどころはなんといっても主人公の新しい相棒となる大型の雌のシェパード、マギー。マギー視点の章では、下手に犬を擬人化したりせず、本当に犬視点ではないかと思えるようにリアルに書かれています。歴史に残る名警察犬ではないでしょうか。ちなみにプロローグでマギーが最初の相棒ピートを失うシーンは、涙なしには読めません。
 というわけで、警察小説が好きな方にも、犬が好きな方にも絶対お薦めの傑作、『容疑者』、是非お読み下さい!

(2014年9月5日)




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