今月の本の話題

2014.08.05

謎多き連続殺人事件に少女は挑む! 長沢樹『武蔵野アンダーワールド・セブン ─多重迷宮─』[2014年8月]

武蔵野アンダーワールドセブン9784488027353
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 記憶は生存戦略の根幹を成すもの。経験を蓄積し、有事の際、判断と予測と行動を組み立てる上での原資となる。しかし、同時に意識無意識にかかわらず美化、改変され――にもかかわらずオリジナルとして認識、保存される。
 (中略)
 目下の問題は、アテにならないどころか、記憶自体が欠落していることだ――見知らぬ部屋の見知らぬベッドで上半身を起こし、となりに寝ている見知らぬ女の子を見下ろしながら、七ツ森神子都は思った。
 朝だ。閉じられたカーテンの隙間から漏れ入ってきた角度の浅い陽光が、ベッドカバーの上に、光の帯を作り出している。静寂。
 背筋から腰にかけて寒さを感じ、神子都はそっとベッドカバーを持ち上げ自分の体を見下ろす。ブラとショーツだけ。もう一度ベッドカバーを持ち上げ、また、さっと戻した。となりの女の子は全裸だった。
 慌てることはない。記憶の欠落など日常茶飯事ではないか。

(――本文より)

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傑作『消失グラデーション』で横溝賞を受賞した新鋭が圧倒的なスケールで新機軸に挑む、青春ミステリをお届けします。

舞台は、国防のため異様に発達した地下世界が広がる、南北に分断された歴史を持つ、もうひとつの日本。

地下世界研究会は、可憐な美貌を持つ財閥令嬢から“鱗雲荘”の調査を依頼される。 有力政治家として名を轟かせた彼女の祖父が遺したその建物の地下には、鍾乳洞を利用して建造された巨大なシェルターが存在していた。
七ツ森神子都をはじめとする地下研のメンバーがシェルター内で屍蝋化した遺体を発見した直後、雪崩が発生し、鍾乳洞は巨大な密室と化した。

それは謎多き連続殺人事件の序章に過ぎなかった……!

十二歳以前の記憶を失った、聖架学院大学一年生・七ツ森神子都が、 地下研メンバーの藤間秀秋、宮田優希らの力を借りて、連続殺人の謎に挑みます。 半年前に発生した新都連続婦女子殺人事件の謎と、 警察と藤間の思惑が複雑に絡み合い、たどり着いた真相とは――。

なぜこの状況で殺すのか?
なぜいま殺すのか?
そして、だれが殺すのか?

ミステリ界期待の新鋭が仕掛ける本格ミステリ。
あなたはこの真相を見破れますか?


(2014年8月5日)




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