今月の本の話題

2014.08.05

この夏、最高に格好いい87歳のヒーローが登場! ダニエル・フリードマン『もう年はとれない』[2014年8月]

9784488122058
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主人公は御年87歳、かつてメンフィス署で凄腕の殺人課刑事として名を馳せたバック・シャッツ。そのキャラクターは、映画がお好きな方でしたら、『グラン・トリノ』のクリント・イーストウッドをご想像いただけるとわかりやすいかと思います。
 在職中の伝説は今でも語り継がれていて、作中、現役警官とのこんな会話のシーンが出てきます。


 はっきりさせておくが、一九五七年から一九六二年までのあいだ、おれがメンフィスのクズどもの死因第一位だったというのはほんとうじゃない。昔そういう噂があって、気分のいい話だった。だが、だれかが一度ちゃんと数えてみたら、四位タイにすぎなかった。一位から三位は、ほかのクズども、ヤクの過剰摂取、ほかの警官たちで、同率四位は車の事故だ。
「すげえな、バック。あんたはまったく情け容赦のないタマだったわけだ」
「まあな」


 現役時代のまま刑事の魂は消えず、痛烈な皮肉を吐き、357マグナムを武器とするバック。とはいえ寄る年波にはさすがに勝てず、認知症になったのではないかと疑い、肉体の老いも感じざるを得ない日々を送っています。


 銃を握って腕をのばし、狙いをつけた。重さのせいで、腕が少し震えた。前より重くなったと信じる理由はないから、最後に狙いをつけたときよりも腕が弱っているのだろう。よくないニュースだ。だが、明るい面を見れば、最後にだれかを撃たなければならなかったときよりも、わたしの視力ははるかに衰えている。


 バックが臨終の床にある親友に、ある事実を告げられるシーンから物語の幕が上がります。第二次世界大戦中の捕虜収容所で、ユダヤ人の自分を虐待した元SSの将校が死んではおらず実は生きて逃亡していた、しかも莫大な黄金を持って。
 現役時代ならいざ知らず、老いたバックに宿敵を負うことは現実的には難しい捜査です。しかし最初は乗り気ではなかったバックも、さまざまな理由から、宿敵と黄金の行方を追うことに。
 そのバックの捜査を助けるのがテキーラというあだ名の孫です。IT関係の知識を持っていない祖父を孫がサポートする。これは祖父と孫のマンハントであり、トレジャーハントの物語でもあります。

 本書はマカビティ賞を受賞し、エドガー賞、アンソニー賞、スリラー賞の候補になりました。アメリカのアマゾンでのレビューの平均評価は4.5星。また「ハリー・ポッター」シリーズや、ロバート・ダウニーJr.主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズのプロデューサーにより映画化が決定しています。
 1ページ目から格好いい文章が登場し、見開きページに一度はニヤリとするジョークや痺れる格好いい文章が登場するのではないかと思われるほど。
 夏のお暑い時期、痛快な87歳のヒーローの活躍をどうぞお見逃しなく!


(2014年8月5日)




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