今月の本の話題

2014.09.05

ハリー・ポッターの著者がこよなく愛した英国児童文学の巨匠のタイムトラベル・ファンタジー、E・ネズビット『ディッキーの幸運』『アーデン城の宝物』[2014年9月]


ハリー・ポッターの著者J・K・ローリングが幼いころに読んで影響を受けたという、英国児童文学の巨匠E・ネズビット。日本では1985年から86年にっけてNHKで放映されたアニメ「おねがいサミアどん」の原作となった『砂の妖精』三部作や、『宝探しの子どもたち』などでも知られている。J・K・ローリングの他にも『魔法使いハウルと火の悪魔』『九年目の魔法』『わたしが幽霊だった時』のダイアナ・ウィン・ジョーンズや〈メアリー・ポピンズ〉シリーズのP・L・トラヴァース、〈ナルニア国ものがたり〉シリーズのC・S・ルイスなど、ネズビットに影響を受けた作家は数多い。

そんなネズビットが書いたタイムトラベル2部作がこの『アーデン城の宝物』『ディッキーの幸運』。二十世紀初頭に暮らす子どもたちが、過去にタイムトラベルをして冒険する物語です。
また、刊行当時のH・R・ミラーによる挿絵も収録しました。三鷹のジブリ美術館でも企画展示をされた、〈アンドルー・ラング世界童話集〉の挿絵にも並ぶ、いま見てもまったく古びない美しいイラストの数々をお楽しみ下さい。


ディッキーの幸運
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『ディッキーの幸運』

 ロンドンに住む足が悪く貧しい少年ディック(ディッキー)。亡くなったお父さんが遺してくれた、幸運をもたらすという棒(チリチリくん)とおもちゃのガラガラだけを友として、意地悪なおばさんの家で暮らしていましたが、ある日家を飛び出し、偶然知り合った物乞いのビールおじさんと一緒に旅に出ます。
 でも、賢く健気な少年ディッキーには本人も知らない秘密がありました。六芒星に並べたムーンフラワーの種の中央にチリチリくんを置くと、十七世紀にタイムトラベルできるのです。
 そこではディッキーはリチャードという名前のアーデン家の御曹司で、お父さんもお母さんも赤ん坊の弟もいます。いとこのエルフリダとエドレッドとも友だちになり、十七世紀でとても幸せに暮らしていたディッキーですが、二十世紀に残して来たビールおじさんがどうしても気になって……。

 賢く健気な少年ディッキーの決断が心を揺さぶる、愛と感動のタイムトラベル・ファンタジー。



アーデン城の宝物
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『アーデン城の宝物』

 お母さんは亡くなり、お父さんが海外に行ったきり行方不明のエルフリダとエドレッドという姉弟がいた。お金がないために、叔母さんと住んでいる崖の上の家も下宿屋として人に部屋を貸し、窮屈な暮らしを我慢する毎日。
 ところが、ふとしたことからエドレッドが、アーデン家の跡継ぎであることが判明。
 十歳にはならないが九歳は過ぎているアーデン卿が、アーデン塚に立って呪文を唱えると宝がみつかるという言い伝えを聞いた二人は、早速試してみることに……。
 条件どおりに呪文をとなえたところ、姿をあらわしたのは、なんとアーデン家の紋章にある不思議な白いモグラ、モルディワープだった。
 モルディワープによると、彼を呼び出すには自分で作った詩を唱えなければならないという。
 モルディワープの助けで過去の時代を訪れ、宝を探す二人だったが……。〈ハリー・ポッター シリーズ〉の著者も愛した英国児童文学の大家E・ネズビットによる、タイムトラベル・ファンタジーの草分けともいえる名作。

 続編『ハーディングの幸運』(仮)もこの秋に刊行。健気な少年が時を超えて冒険する、愛と感動の時間旅行ファンタジー、お楽しみに。

(2014年6月5日)




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