今月の本の話題

2014.05.08

究極の幻想文学。読書人必読の書〈ゴーメンガースト〉三部作復活!2014年6月刊行[2014年5月]

ゴーメンガースト
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タイタス・グローン
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 まさしく究極の幻想文学、マーヴィン・ピークの〈ゴーメンガースト〉三部作は、1948年から59年にかけてイギリスで刊行され、いまだに本国では本格ファンタジー、幻想文学のスタンダードとして人気を保っています。
 日本では1985年から三年かけて翻訳され一部で熱狂的な評判を呼びました。
 英国児童文学を経て〈ナルニア国物語〉〈ゲド戦記〉でファンタジーに目覚め、『指輪物語』でとどめを刺されたファンタジー好きの自分にとって、この〈ゴーメンガースト〉三部作との出会いは衝撃的でした。
 言葉にできないほどの奇怪かつ魅力的な、ゴーメンガーストというひとつの閉じた世界で繰り広げられるグロテスクで奇矯な物語。麻薬のように底なし沼のように、読み始めると抜けられなくなること請け合いです。

いつとは知れぬ時のいずことも知れぬ地にその城はあった。重苦しく巨大な石の集積物、奇矯な人間たちが蠢く石の迷宮ゴーメンガースト。七十六代の永きにわたって城を治めるはグローン伯爵家。笠貝のごとくびっしりと城を取り巻くは〈外〉の民のあばら屋の群れ。これが世界の総てであった。そして今、七十七代城主が呱々の声を上げた。菫色の瞳を持ったこの男児の名前はタイタス……。

 第一部『タイタス・グローン』、第二部『ゴーメンガースト』ともに六百頁を超えるボリューム(第三部は四百頁弱です)ながら、面白いこと間違いなし。絶対に読んで損はありません。充実した読書体験をお望みなら是非この迷宮の扉をひらいて、めくるめく言葉の魔力に酔いしれてください。

タイタス・アウェイクス
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タイタス・アローン
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 そして三部作とうたっていながら続編が出てしまうことは、決してめずらしくありませんが、この〈ゴーメンガースト〉の場合は、もともと著者ピークは三部作で終わらせるつもりではなかったのですが、健康を害し亡くなってしまったために三部で終わってしまったというのが本当のところでした。病とたたかいながらピークは続編のアイディアを書き綴ったメモを残していました。ピークの妻にして同じくイラストレーターで作家のメーヴ・ギルモアが、夫の死後、そのメモをもとに書いたのが四部目『タイタス・アウェイクス』です。

 第二部『ゴーメンガースト』のラストで故郷の城を離れ、第三部の『タイタス・アローン』では、ゴーメンガーストなど見たことも聞いたこともない人々の間をさまようことになった第七十七代ゴーメンガースト伯爵タイタスは、その後さらに彷徨を重ねます。第四部『タイタス・アウェイクス』で彼はさらに多くの奇矯な人々に出会い、様々な出来事に遭遇しますが、結局何処にも安住の地を見いだせず終わりなき探索を続けるのです。
夫ピークのアイディアをもとにしたとはいえ、次第に文体にあらわれるのは、書き手メーヴ自身の肉声です。病を得て早逝した天才ピークに捧げるオマージュであると同時に、彼女自身の探索でもあるのかもしれません。

 ファンタジー界のディケンズにも例えられる、幻想文学の最高峰シリーズ幻の最終刊は、六月刊行です。既刊とあわせてお楽しみ下さい!

(2014年5月8日)




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