今月の本の話題

2014.05.08

最高の職人は、最高の名探偵になり得る。ポール・アダム『ヴァイオリン職人の探求と推理』[2014年5月]

ヴァイオリン職人の探求と推理
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 みなさまこんにちは。さわやかな時季にぴったりの、ゆったりした気分で読めるミステリをお届けします!

(あらすじ)

 ジャンニはイタリア・クレモナの名ヴァイオリン職人。ある夜、同業者で親友のトマソが殺害されてしまう。彼は前の週にイギリスへ“メシアの姉妹”と言われるヴァイオリンを捜しに行っていた。それは一千万ドルを超える価値があるとされる、幻のストラディヴァリウスだった。ジャンニは友人で刑事のグァスタフェステに協力し事件を探り始める。だが新たな殺人が……。名職人が、豊かな人脈と知識、鋭い洞察力を武器に、楽器にまつわる謎に挑む!

* * *

 主人公のジャンニは、63歳の男やもめのヴァイオリン職人さん。あたたかで実直な人柄で、誰にでも好かれる人物です。本書を読んで一番驚いたのが、「職人さんってこんなにも名探偵の素質をもっているのか!」ということでした。たしかに、ものを造るひとが備えている鋭い観察眼や集中力は、名探偵にとって必須のものですね。本書のジャンニは推理の天才というわけではありませんが、自分のもてる力や人脈を駆使して真相にせまっていきます。その姿は、読んでいて応援したくなること間違いなし! なのです。

 さらに、この作品の舞台となっている高級ヴァイオリン、ひいては楽器業界という特殊な世界の様子もすごくおもしろいです。本書に登場するような高級ヴァイオリン――とても有名なストラディバリや、グァルネリ・デル・ジュスは、一般的に数億円もするような価値を持っています。(ちなみに、東日本大震災の復興支援で、2011年に最高価格の約1600万ドル=約12億7000万円で落札されたそうです)そんな華やかな世界と、輝きの裏で暗躍(?)する悪徳ディーラーや詐欺師たち、そして贋作! 楽器業界の内幕話や、たくさんの秘密に満ちた音楽史のエピソードが満載です。特にオークションのシーンは、臨場感たっぷりなのでオススメ。知られざる世界を覗けちゃいますよ!

 また、主にイタリアが舞台だけあって、登場人物がいつもおいしそうなものを食べていて、読んでいてうらやましくなります(笑)。風光明媚なヨーロッパの歴史散歩も楽しめるし、音楽への愛情が感じられる点も魅力になっています。たしかな謎解きとおいしいものと美しい風景、そして常に流れているすてきな音楽。もうほんと、読書にこれ以上何を望もうか! という感じです。

 『ヴァイオリン職人の探求と推理』は、5月30日ごろ発売です。どうぞ気軽に手にとってみてください!

*各メディアで絶賛!*

グァルネリやストラディヴァリの名前を知らなくても問題ない。おおいに驚かされ、読書の悦びを感じられるだろう。――〈シカゴ・トリビューン〉

感動を呼び起こす冒頭の旋律から、徐々に小さくなっていく最後の一音まで、ミステリファンと音楽ファンはどちらも、このすばらしいミステリに魅惑されるに違いない。――〈パブリッシャーズ・ウィークリィ〉

音楽の世界に足を踏み入れ夢中になれる、とても巧みなミステリだ。実直な職人である主人公のゆったりした語り口は、豊かな広がりを持つ本書とぴったり合っている。――〈カーカス・レビュー〉


(2014年5月8日)




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