今月の本の話題

2014.03.05

ウォルターズ作品を読まず嫌いのアナタにぜひ!相変わらずエグいけど読みやすい中編集です。 ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』【2014年3月】

エリザベス王女の家庭教師
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2013年は、いちミネット・ウォルターズ・ファンとして幸せな年でありました。2013年2月に刊行した『遮断地区』が高く評価され、主立ったミステリの年末ランキングにランクイン! ちょっとすごいので箇条書きしちゃいます。

*第1位『ミステリが読みたい!2014年版』海外編
*第2位『このミステリーがすごい! 2014年版』海外編
*第3位『週刊文春 2013年ミステリーベスト10』海外編
*第2位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/翻訳家&評論家部門
*第4位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/総合部門
*第4位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/読者部門

 いやぁ、壮観です。ちなみにまだ結果が出ていませんが、翻訳ミステリー大賞にもノミネートされております。おかげさまで重版もできましたし、これで他の長編も翻訳刊行できます! ありがとう読者のみなさま! とはいえ、「ミネット・ウォルターズってなんか暗くて重そうで手がでないわ……」という方もいるかもしれません。そんなアナタに、入門編として手にとってもらえそうな中編集ができあがりました!

 「養鶏場の殺人/火口箱」は、ウォルターズの中編2本を収録しています。「養鶏場の殺人」は、1920年にイギリスで実際に起こった“養鶏場殺人事件”を小説仕立てにした実録ものです。「火口箱」は、イギリスの小さな村で起きた老女殺害事件を通して、狭いコミュニティーにおける“偏見”がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描いています。

 このふたつに共通するのが、“読みやすさ”を念頭に置いて書かれている点です。「嘘でしょ!?」というツッコミが聞こえます……。「養鶏場の殺人」はイギリスの「クイック・リード」計画の一環として、2006年に刊行されました。「クイック・リード・シリーズ」は、本をあまり読みつけていない大人が、平易な言葉で書かれた大人向けの本を読むことによって読書になじみ、読む力を高めてもらうためのシリーズとのこと。本書は2006年のベスト・クイック・リードに選出されました。「火口箱」は、最初にオランダでDe Tondeldoosのタイトルで本になりました。1999年のブック・ウィークに、読書好きの人々にふだんは読まない分野の本をためしに読んでもらおうという試みで、オランダ読書振興協会が50万部以上を無償配布したそうです。(試みはスバラシイと思いますが、なぜにウォルターズに依頼したのかが気になる!!)

 ということで、この2編はすごく読みやすく仕上がっています(さらに、なんと、短いのです)。かといって軽い作品かというとそうではありません。ウォルターズ作品の魅力がぎゅぎゅっと詰まっており、ファンの方にもじゅうぶん気に入ってもらえると思います。大矢博子さんにご執筆いただいた解説でも、「中編という長さの中に、驚くくらいミネット・ウォルターズの粋が詰まっている。入門編にウッテツケなのはもちろん、ウォルターズファンの読者も、この「らしさ」と切れ味にはご満足いただけると思う」という評価が! ぜひぜひご一読いただけますと嬉しいです。

 『養鶏場の殺人/火口箱』は3月12日ごろ発売です。本書を読んで、あなたもウォルターズのとりこになりましょう~!  
(2014年3月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

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