今月の本の話題

2014.03.05

一枚の葉書が、家族を、周りのひとびとをつないでいく。 『葉書の中の白い街』西本秋【2014年3月】

エリザベス王女の家庭教師
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春休み、姉と弟の父親捜し。
手がかりはたった一枚の葉書のみ。

「この葉書の先に父がいる――」

* * *

しっかり者の姉・花と元気いっぱいの弟・修が、“白い街”と呼ばれる「ゆめのはら商店街」を訪れるところから物語は始まります。
二人の目的は六年前に行方不明となった父親を捜すこと。
三年ほど前に父の名前で送られきた一枚の葉書に描かれた、見知らぬおばあさんの絵と消印だけを頼りに、この地を訪れたのです。

クリーニング店を営む商店街会長に事情を話し、世捨て人のような生活を送る画家・明人のアトリエに居候することになった花と修。
陽気な薬屋の二代目、頑固な蕎麦屋、黒い服しか着ないワインバーの女店主、自称イギリス人英会話講師、人通りも娯楽も少なく、退屈している商店街の面々は、興味半分、二人の父親捜しを見守ります。

しかし、葉書の秘密を探る姉と弟の元に「街から出て行け」と脅迫状が届くようになります。一方、花も何かを隠しているようで――。

* * *

小説推理新人賞を受章しデビューした著者は、『向日葵は見ていた』『闇は僕らをつないでいる』(双葉社)と意欲作を次々に発表し、1月に文庫書き下ろし『天国ゆきカレンダー』(ハヤカワ文庫)を上梓しました。
一度手に取るとぐいぐいと物語の中に引き込まれ、ページをめくる手が止められなくなります。
そして今作は、いずれとも違った読後感に包まれるはず。

さあ、「ゆめのはら商店街」にようこそ。

(2014年3月5日)




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