今月の本の話題

2015.06.05

英雄、女神、冥界の王……。ウェールズの英雄譚『マビノギオン』が、華麗なファンタジーに。『翼あるものたちの女王』エヴァンジェリン・ウォルトン[2015年6月]


『マビノギオン』をご存じでしょうか?
アイルランド・スコットランドと並びケルト文化の息づく地、英国の西部ウェールズ地方に口承で伝わる神話・伝説を十二世紀半ばにまとめたもので、4つの物語で構成される、神話ファンなら必読の伝説の書です。
 この〈マビノギオン物語〉は、タニス・リー、パトリシア・A・マキリップらと並びファンタジーの黄金期を築き、幻想文学大賞で生涯功労賞を受けた、ファンタジー界の重鎮エヴァンジェリン・ウォルトンが、原典を自らの奔放な想像力を駆使して書き直した、彼女の代表作とも言える作品です。
 原典とおなじくこの〈マビノギオン物語〉も、第1巻『アンヌウヴンの貴公子』、第2巻『スィールの子ら』(仮)、第3巻『翼あるものたちの女王』(仮)、第4巻『強き者の島』の4巻で構成されています。

 神々、女神、英雄、そして怪物が満載の、力強い物語。荒々しく華麗なファンタジー世界をお楽しみ下さい。


翼あるものたちの女王
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●最新刊『翼あるものたちの女王』
〈強き者の島〉に大いなる悲劇をもたらしたアイルランドとの戦は終わった。
 ブラン王も、その弟である双子ニシエン、エヴニシエンも、そして本来ならウェールズの国母となるべき妹ブランウェンも死んでしまった。あまりにも大きな勝利の代償。
 そして生き残ったのはブラン王の弟マナウィダンら七人のみであった。
 兄妹を失い、帰る地もなく、虚しさにとらわれるマナウィダンを、共に帰還したダヴェドの若き大公プラデリは、自分と一緒に故国ダヴェドに行かないかと誘う。寡婦となりひとり寂しく暮らす母フリアノンの話し相手となってほしいというのだ。
 フリアノンはダヴェドの前王プウィスが冥界アンヌウヴンから連れ戻った〈妖精の国〉の王女。そして実はマナウィダンは、かつてダヴェドを訪問した際にフリアノンに会ったことがあり、強く心惹かれていたのだ。さらにマナウィダンと彼女のあいだには、ある秘密が……。
 複雑な思いを抱えながらもダヴェド行きを決心するマナウィダン。傷心の英雄を待つ運命は?
 
 神話ファンタジーの金字塔シリーズ第3弾。


スィールの娘
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●第2巻『スィールの娘』
〈強き者の島〉の〈旧き民〉の長スィールは、上王ペリの妹ペナルディンの夫だったが、あるとき彼を目の敵にする〈新しき民〉のエイロウィズの策略で囚われの身になってしまう。愛しい夫を帰してほしければ自分と床をともにするようにというエイロウィズの要求をペナルディンは呑んだ。
 その結果ペナルディンにはスィールとの間の息子ブラン、マナウィダン、娘ブランウェンのほかに、エイロウィズとの息子、双子のニシエン、エヴニシエンが生まれた。
長じて王となったブランの王位は〈旧き民〉の習わしにより、彼の息子カラドックではなく、妹ブランウェンが産む息子が継ぐはずだった。
 だが、アイルランドの上王マソルフがブランウェンに求婚したとき、ブランの心は揺れた。妹がアイルランドに嫁いでしまえば自分の息子が〈強き者の島〉の王位を継げるではないか。こうして国母となるべきブランウェンは異国に嫁ぎ、〈強き者の島〉を覆い尽くす悲劇の種は蒔かれたのであった。

 世界幻想文学大賞の生涯功労賞を受けた大家が描く壮絶な悲劇、『マビノギオン』第二枝の物語。


アンヌウヴンの貴公子
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●第1巻『アンヌウヴンの貴公子』
 従者たちとともに狩りに出たダヴェドの大公プウィスは、獲物を追跡する猟犬を追いかけ従者たちとはぐれてしまう。愛馬に乗りひとりグレン・キッフの深い森に入りこんだプウィスは、森の奥にひらけた緑の野原でひとりの男に出会った。
 灰色ずくめの男その男の瞳は黒光りする闇。目を合わせると、そこから冷気と共に、凄まじい知識がプウィスに流れ込んできた。
 その不思議な男こそ冥界アンヌウヴンの王、〈灰色のきみ〉アラウンだった。アラウンは、冥界の主権を別の王と争っており、戦いの雄たるプウィスに、自分にかわって敵と闘ってほしいというのだ。
 アラウンの頼みを承知したプウィス。だが冥界に行くために、互いの身体を交換して相手の領地に行かねばならなかった。プウィスはアラウンの身体を借り、冥界に乗り込むが……。
 冥界で出あう恐ろしい化け物、麗しき女神との恋……。
 世界幻想文学賞で生涯功労賞をうけたファンタジー界の重鎮が描く、神話ファンタジー〈マビノギオン物語〉第一話。

(2014年2月5日/2015年6月5日)




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