今月の本の話題

2014.02.05

三浦しをん氏推薦。迷宮にとらわれた魂の再生の物語『ディオニュソスの蛹』小島てるみ[2014年2月]


夏を殺す少女
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神話と芸術が太古の闇を照らすとき、浮かびあがってくるのは──うつくしく危険な獣、私たちのなかで眠る希望。
三浦しをん


 ナポリに暮らす不良少年アルカンジェロは、唯一の肉親である母を失って以来、たった独りで生きてきた。そんなある日、はるかなアルゼンチンのブエノスアイレスから、亡き母宛の手紙が届く。手紙の差出人はこれまで存在すらしらなかった父方の叔父。そしてその手紙から、かつて母がブエノスアイレスにいたこと、自分に血を分けた兄がいることを知ったアルカンジェロは、手紙の差出人に会いに行く決意をする。
 だが、かの美しい街で彼を待ち受けていたのは、憎悪に満ちた兄レオンと、母にまつわる禁忌の物語だった。
 ブエノスアイレスへ移住したナポリの画家、麗しき流転の双子、血の絆をもたない男だけの一族、アルカンジェロとレオンをつなぐカトリック伝統の「奇蹟の治癒絵画」……。

 禁断の愛と秘められた傷が織りなす神話の迷宮世界。迷宮にとらわれた魂の再生の物語。


●著者コメント
 芸術に熱狂する街、ブエノスアイレスとの出会いから、物語は生まれた。この街にとって、芸術は水のように、蜜のように、生きるために決して欠かせぬ存在だ。極めて洗練された都会でありながら、野蛮なほどの熱気をはらみ、「優雅なる野獣」ともいうべき、魅惑の芸術作品を生み出し続けている。ブエノスアイレスは何度も問いかけてきた。「なぜ、表現せずにいられないのか?」その答えは、私のからだの奥底に秘められていた。

(2014年2月5日)




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