今月の本の話題

2014.01.08

『大きな森の小さな密室』の著者の原点となる本格ミステリ『密室・殺人』小林泰三[2014年1月]


10万部を超える大ヒット『大きな森の小さな密室』の著者・小林泰三のミステリ長編『密室・殺人』が、この度、創元推理文庫で刊行されます。小林泰三のミステリの原点ともいえる作品です。

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ある日、探偵である四里川陣と助手の四ッ谷礼子の事務所に、老婦人が訪ねてくる。彼女は、息子にかけられた殺人の嫌疑を晴らしてもらうため、彼らに事件の調査を依頼する。

傍若無人な四里川に命じられて礼子は雪山に建つホテルへと調査に赴くが、彼女を待ち受けていたのは、密室と殺人の謎だった。
カードキーでロックされ、更に衆人環視下に置かれていたという部屋から女性が姿を消し、密室の外で死体となって発見される。転落死にも自殺にも見える事件が、密室の存在によって他殺でも自殺でも有り得ない状況になっていた。密室が事件を、人間を狂わせていく――。

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著者の第一長編にして原点である本作は、「怪しげな伝説のある雪の山荘で起こる、奇妙な密室殺人」という正統派本格ミステリの設定ながら、ひと癖もふた癖もある作品になっています。 論理をこねくりまわしては主人公を惑わせる探偵・四里川陣をはじめとして、容疑者も一筋縄ではいかない人物ばかり。密室と殺人の謎が混迷を極めていく中、用意周到に張り巡らされた伏線が思いもよらぬかたちで結びつき、異様な真相を紡ぎ上げていきます。意欲に満ちた本格ミステリの傑作となっています。

余談ではありますが、本作には『大きな森の小さな密室』や『アリス殺し』に出てきたあの人やあの人も登場します。小林泰三ミステリの入門書として、更にどっぷり浸かるための一冊として、『密室・殺人』をお手に取っていただけると幸いです。

(2014年1月8日)




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