今月の本の話題

2014.01.08

国際アンデルセン賞受賞作家、マーガレット・マーヒーの本格異世界ファンタジー『不完全な魔法使い』 [2014年1月]


 マーガレット・マーヒーをご存じでしょうか?
 1982年に『足音がやってくる』で、そして1984年に『目ざめれば魔女』で(共に岩波書店)で、二作連続してカーネギー賞を受賞、2006年には児童文学界のノーベル文学賞とも言われる国際アンデルセン賞を受賞した(他にアストリッド・リンドグレーン、エーリッヒ・ケストナー、トーベ・ヤンソン、最近ではデイヴィッド・アーモンドなどの錚々たる面々が受賞しています)、押しも押されもせぬ児童文学の大家で、2012年に惜しまれながら亡くなるまで多数の作品を残しています。
 そのマーヒーが2009年に発表した大人向けのファンタジーがこの『不完全な魔法使い』。架空の国ホード王国を舞台にした本格的な異世界ファンタジーです。

 七つの領地を擁し、〈王〉と〈英雄〉が並びたつホード王国。この地で農家を営む古い民の末裔ターバス家の少年ヘリオットは、幼いころから激しい頭痛の発作に悩まされてきた。おまけに見知らぬ男の子が出てくる奇妙な夢をくりかえし見る。ヘリオットより何歳か年上の少年に必死になってメッセージを伝えようとしている夢だ。
 ヘリオットが十二歳になったとき、ついに彼の頭の奥に隠れていた分身――荒ぶる魂――が目を覚ました。そしてその分身がもつ魔法の力ゆえに彼は家族から孤立してしまう。
 そんなある日、農場を立派な身なりの男たちが訪れる。〈王の右腕〉であるグラス卿と幻視の名人だという王の時計管理官フューオ博士、暗殺者である〈王の執行官〉だ。彼らに〈ホードの魔法使い〉候補として王都ダイヤモンドに連れて行かれそうになったヘリオットは、自らの手で運命を切り拓くべく農場を抜け出した。
 王都ダイヤモンドに座すホードの王には三人の息子がいた。王太子たる第一王子ベトニー・ホード、〈英雄〉の座を狙う第二王子リュース、生まれながらに幽霊に取り憑かれ“狂気の王子”と呼ばれる第三王子ダイサードだ。
 その第三王子のダイサードと、ホード王国の領地のひとつヘイゲンの領主の娘リネット、そして逃亡の旅の末に王都ダイヤモンドにやってきたヘリオットとの出会いが、ホード王国の運命を大きく変えることになる……。

 魔法の力をもつヘリオット、“狂気の王子”ダイサート、ヘイゲンのリネットはもちろん、あらすじでは紹介できませんでしたが、王都ダイヤモンドでヘリオットが出会う浮浪児のケーリーのキャラクターがとても魅力的。名手マーヒーが創造した異世界ファンタジー、ご堪能下さい。
(2014年1月8日)




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