今月の本の話題

2013.11.06

スウェーデン・ミステリの女王の代表作登場。リサ・マークルンド『ノーベルの遺志』[2013年11月]

ノーベルの遺志
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 その夜、ストックホルムの市庁舎ではノーベル賞晩餐会が開かれていた。
 タブロイド新聞の敏腕記者アニカは、取材のために慣れないイブニングドレスに身を包んで参加していたが、ライバル紙の男性記者と舞踏会で踊っている最中に、いきなり誰かに押されてつんのめってしまう。
 何者かがダンスの最中に受賞者に向かって発砲したのだ。
 狙撃された受賞者は重傷、なぜか一緒に踊っていた選考委員会の事務局長は即死。狙撃のときもっとも近いところにいたのはアニカだった。狙撃されて死亡した女性の顔を最後に見たのも、犯人らしい黄色の目をした女を目撃したのもアニカだ。スクープをものにする最大のチャンス! だが警察は彼女に情報開示の禁止を言い渡す。
 アニカは殺された選考委員の事務局長キャロリーンの死の瞬間が忘れられなかった。あの視線は何かをうったえていた……。
 事件を目撃していながら、記事にできないジレンマ。それに追い打ちをかけるように、アニカは新聞社から半年の休職を言い渡される。だが、転んでもただでは起きないアニカ。時間があるのをいいことに選考委員会のあるカロリンスカ研究所を調べ始める。
 ノーベルの遺志を振りかざす常軌を逸した教授、委員会のメンバー同士の確執、そして学生の不振な死。華やかなノーベル賞の陰に何が? 
 夫との関係に苦悩し、懸命に子育てをしながら新聞記者として事件を追うアニカ。スウェーデンのベストセラー作家でジャーナリストでもある著者が、ノーベル賞選考の舞台裏に迫る傑作。

 著者リサ・マークルンドは主人公のアニカさながらの華やかかつ波乱に満ちた経歴をもつ女性で、二十一歳でシングルマザーになったあと、大学でジャーナリズムを専攻し、スウェーデン最大のタブロイド紙の人気記者にまでなった。36歳で『爆殺魔』で作家デビューを果たした。本作は2012年にスウェーデンで映画化され、日本でも『ノーベル殺人事件』のタイトルでBSで放映、DVDにもなっている。

(2013年11月6日)




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