今月の本の話題

2013.09.05

真面目で、でも可笑しくて、ちょっとだけブラック。銀行強盗の被害者たちに起こる不思議な事件を描く、カウフマン『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』[2013年9月]

銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件
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『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』の原題はThe Tiny Wife。直訳すると“とっても小さい妻”という意味のこの本、不思議なタイトルだなぁと思われるかもしれません。が、実はこのタイトルそのままのお話なのです。

* * *

 ある日、カナダの銀行に紫色の帽子をかぶった強盗がやってきた。彼はその場にいた13人から”もっとも思い入れのあるもの“を奪い、去り際にこんな台詞を残した。
「私は、あなたがたの魂の51%を手に、ここを立ち去ってゆきます。そのせいであなたがたの人生には、一風おかしな、不可思議なできごとが起こることになるでしょう。ですがなにより重要なのは――その51%をご自身で回復させねばならぬということ。さもなければあなたがたは、命を落とすことにおなりだ」
 その言葉どおり、被害者たちに奇妙なことが起こりはじめる。身長が日に日に縮んでしまったり、心臓が爆弾になってしまったり。母親が98人に分裂した男性もいれば、夫が雪だるまに変身した女性も……。いったい、なにがどうなっているのか?

 この本の特長は、いくらでも“深読み”ができること。いったい、なぜ妻は縮んでしまったのか? なぜ心臓が爆弾になってしまったのか? なぜ夫は雪だるまになってしまったのか? 銀行強盗の被害者たちに起こるさまざまな出来事は、とてもインパクトがあり、かつすばらしいイメージ喚起力を持っています。ただ読んでいるだけでもおもしろいのですが、よくよく読んでいって、それぞれの出来事の裏にある著者の思惑――ひそかなたくらみに気づいたとき、物語は新たな一面を見せるはずです。ぜひぜひ“深読み”してみてください!

 こんなおかしな物語を書いたのは、カナダ出身の作家アンドリュー・カウフマンです。彼はノヴェラ(中編作品)All My Friends Are Superheroes (2003)でデビューし、作家、脚本家、ラジオ・プロデューサーなど多彩な分野で活躍しています。

 さらに本書を彩るのは、イギリスのイラストレーター、トム・パーシバル氏によるすてきなイラストです。シンプルな影絵だからこそ、物語のイメージをふくらませる手助けをしてくれています。書籍紹介ページの「内容を立ち読みする」で、イラストも含めた立ち読みができますので、どうぞご覧ください。

 カウフマン『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』は、9月11日ごろ発売です。とても読みやすく、楽しい――でもちょっとだけブラックなお話です。デザイナーの森田恭行さんによる、鮮やかなレモンイエローのおしゃれなカバーが目印。お値段も税込み1260円と大変お手頃ですので、ぜひ手にとってみてください!

(2013年9月5日)




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