今月の本の話題

2013.07.05

泥棒もつらいよ――とびきり几帳面な泥棒の青年が遭遇した数々の事件と彼の活躍(?)を描くお仕事ミステリ! マシュー・ディックス『泥棒は几帳面であるべし』[2013年7月]

泥棒は几帳面であるべし
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これであなたも泥棒になれる?
“盗まれていると住人に気づかせない”
がモットーの泥棒が登場!

 本書の主人公、マーティンの職業は泥棒。とはいえ、彼は本業に対して独特のモットーを持っていて、いわゆる空き巣などとは違う! と自負しています。そんな彼のモットーは、“盗まれていると住人に気づかせない”こと。窓ガラスを壊したり家を荒らしたりはせず、盗みに入る家を慎重に選び、住人の外出時間や周囲の環境を徹底的に調べて“お得意”を決め、泥棒が入ったことに気づかれないように食料品や宝石などを盗んでいるのです。

 彼は泥棒を成功させるため、独特のルールを決めています。「なくなったのが気づかれるようなら、盗まない」「“お得意”には子どもやお手伝いさんや犬のいない家を選ぶ」「各家での滞在時間は15分以内にする」などなど……。こうして怪しまれることなく、10年以上も(!)泥棒を繰り返していた彼ですが、ある日“お得意”の家のトイレでちょっとした“事件”が起こり、人生を大きく変えられてしまうのです。

 本書の魅力は、なんと言っても、几帳面で生真面目で潔癖症のマーティンのキャラクター! 彼は住人たちに気づかれないよう、不要なものや日用品のストック、使っていない宝石などを盗み出しています。いくら気づかれていないからといって、泥棒は泥棒。それも勝手に家のなかを動き回られているとすれば、不気味さも感じます。しかし、このマーティンという青年は、どこか憎めない。神経をとがらせて生真面目に仕事をする姿には一種のおかしみをおぼえます。また、“お得意”に重大な問題が起こったとき、彼らを助けるために奔走するマーティンには、なんだかかわいらしさも感じることができます。

 そんな愛すべき泥棒の産みの親、マシュー・ディックスは、小学校教師をしながら作家活動を行っています。18歳で家を出て以来、さまざまな職業を経験しており、現在も執筆のほか、結婚式場で活動するDJもしているそうな。そんな多種多様な経験が活かされているのか、本書での泥棒の描写は、奇妙なほどリアルです。一種の「お仕事小説」としても楽しむことができるほど。ちなみに泥棒は著者の実体験ではないとのことですが、その割には詳しすぎるような……。

『泥棒は几帳面であるべし』は7月11日ごろ発売です。気楽に楽しく読めるお話ですので、どうぞ手にとってみてください!
(2013年7月5日)



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