今月の本の話題

2013.05.08

少女を巡る七つの不思議が、最後に“大きな物語”を描き出す。 第18回鮎川哲也賞『七つの海を照らす星』七河迦南[2013年5月]

七つの海を照らす星
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家庭では暮らせない子ども達の施設・七海学園では、少女にまつわる七つの怪異が「学園七不思議」として言い伝えられて、今でも学園で起きる事件に不思議な謎を投げかけていた。
孤独な少女の心を支える“死から甦った先輩”。行き止まりの非常階段から夏の幻のように消えてしまった転入生。少女が六人揃うと“七人目”が囁く暗闇のトンネル。……勤めて二年目の保育士・北沢春菜は、児童福祉司・海王の力を借り、謎解きを通して子どもたちが直面する悩みを解決すべく奮闘する。
 過去と現在を繋ぐ六つの謎、そして七つ目の謎が解かれるとき明らかになるもうひとつの真実とは。七編の物語が紡ぎ上げる清新な本格ミステリ。


本作を読了後、七海学園の子どもたちと職員のその後が気になった方は、続編『アルバトロスは羽ばたかない』もぜひお手に取ってみて下さい。保育士の春菜が、相変わらず多忙な仕事に追われながらも、解決に奔走した四つの事件に、高校の屋上で起きた転落事件の謎が絡む、長編連作形式の本格ミステリです。
 バラエティ豊かな短編を楽しみたい方は、第三作『空耳の森』も併せてどうぞ。山岳を舞台にした緊迫のサスペンス「冷たいホットライン」、孤島に置き去りにされた幼い姉弟の運命を描く「アイランド」、不良少女と少年探偵の物語「さよならシンデレラ」など、一編一編に凝らされた職人的技巧に感嘆すること間違いなしの九編を収録。
 どちらも、繊細な筆致で描かれるあざやかな謎解きをお楽しみ頂けます。

(2013年5月8日)




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