今月の本の話題

2013.04.05

警部補&新米医師がヴィクトリア朝エジンバラを舞台に大活躍。魅惑のフーダニット! アランナ・ナイト『蒸気機関車と血染めの外套』[2013年4月]

蒸気機関車と血染めの外套
書籍の詳細を見る
 イギリスの図書館で最も愛されている作家のひとり――歴史ミステリの大家として名高い著者の、軽やかなミステリをお贈りします。

* * *

 医師ヴィンスの上司ケラーの妻、メイベルが忽然と姿を消した。彼女は列車で妹のもとへと向かったが消息不明となり、二週間後に線路脇の雪の中から血まみれの外套と肉切り分け用のナイフが発見された。ヴィンスの義父である警部補のファロは、二週間前にケラー家で開かれた晩餐会を思い返す。メイベルを殺した何者かの悪意の芽は、あの夜の出来事をきっかけに育ちはじめたのか?

 著者のアランナ・ナイトはスコットランド出身の女性作家です。ミステリ、歴史小説、ゴシック・ロマンス、ノンフィクション、伝記など多彩なジャンルをカバー、著作は60作に及んでいます。スコットランド作家協会の設立者のひとりで、国際ブックフェアや数多くの図書館イベントに呼ばれる作家歴40年の大ベテラン作家! そんな著者の代表的なシリーズが、『修道院の第二の殺人』からはじまり、1988年から2003年まで15作続いている〈ファロ警部補シリーズ〉です。

 今回、ファロは蒸気機関車で旅に出た女性、メイベルの失踪事件を捜査します。彼女を殺害する動機を持つ者は誰か……? 疑わしい人間がおおぜい登場し、かなり惑わせてくれます。この短さにして、内容はぎっしりつまった、とても良いミステリです。

 また、このシリーズは、登場人物がとにかく魅力的! 主人公のファロ警部補は妻のリジーを亡くしたやもめで、8歳と6歳の娘がいます。シェークスピアとベートーヴェンを愛するダンディな40歳です。そして現在は、リジーが産んだ、義理の息子にあたる新米医師、ヴィンスと暮らしています。ヴィンスは22歳の金髪の美男子で(今回のカバーでいちばん目立っている美青年ですよ!)、ファロとの仲も良好。ただし、生い立ちに問題があり、自分でもそれを気にしています。彼らのあたたかみに満ちた関係や、女性たちとのロマンスが、落ち着いた筆致で淡々と書かれているのも読みどころのひとつです。決して完全無欠の強い男ではないファロとヴィンスですが、そこが魅力。事件はなくても(!?)、彼らの活躍を追いかけたくなります!

『蒸気機関車と血染めの外套』は、4月11日ごろ発売です。シリーズ作品ですが、事件は完全に独立しているので、本書から読んでも大丈夫です。ぜひぜひお手にとってみてください!


(2013年4月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

ミステリ・SF・ホラー・ファンタジーの専門出版社|東京創元社
バックナンバー