今夜、外の世界はこの映像の中よりも暗い。
雨粒が嫌がる窓ガラスに重くのしかかる夢のようだ。ぼくはどうすればいいの?
ぼくは、かつて自分のものだった一部を取り返したいだけなのに。

 五百年の長きにわたりフォーゲルシュー伯爵家が所有していたスコーグソー城と広大な領地。経済的に立ちゆかなくなった伯爵家からそれを買い取った、やり手の弁護士でありIT長者でもあるピエテションが殺害された。死体を発見したのは一緒に狩りにいく予定だった領地の借地人たち。
 被害者ピエテションは幼い頃からこの土地で育ち、貧しい出自にもかかわらず評判の天才児だったらしい。
 真っ先に警察の捜査線上に浮かんだのは、代々所有していた領地を売る羽目になった老伯爵とその息子と娘。三人とも口をそろえて領地の売却は納得の上だと言い張るが、どうやら本心ではなさそうだ。
 また被害者は、大規模な詐欺スキャンダルを起こしたのち海外に逃亡した男とも取引があったらしい。捜査にあたっているリンショーピン市警犯罪捜査課のモーリンは、海外逃亡したその詐欺師を追ってスペイン領のテネリフェ島に飛んだ。だが、相手は老獪な詐欺師、思うような成果は得られない。
 さらに調べ進むうちに、被害者のピエテションが若い頃に死者一名、重傷者一名をだした悲惨な交通事故に遭っていたことが判明する。どうやら伯爵の領地内で開かれたパーティの帰りに起こったらしい。

 恨みか金がらみか。伯爵家と被害者の関係は? 自らもアルコール依存症の危機にある女性刑事モーリンが古城での奇怪な殺人に挑むシリーズ第3弾。



天使の死んだ夏 上
書籍の詳細を見る
天使の死んだ夏 下
書籍の詳細を見る
夏の天使よ、お前を殺しはしない。
甦らせるだけだ。
再び純潔になるのだ。すべての穢れの過去は消え去り、時間が自分を欺き、楽しかったことだけがすべてに打ち勝つ。それとも、本当に殺そうか。いや、すでに殺してしまったのだろうか? 愛を再生させるために…。


 燃え上がるように暑い夏。公園で一人の少女が保護された。乱暴されたらしく傷だらけなのに、全身が磨かれたように清潔で真っ白。だが事件当時の記憶はいっさいなかった。少女に何がおきたのか? 通報を聞いて駆けつけたリンショーピン市犯罪捜査課のモーリン・フォシュは途方にくれた。
 そして同じころ警察に、別の少女の失踪届が出されていた。両親が旅行に行っているあいだに消えてしまったというのだ。

 一方リンショーピン郊外では森林火災がすべてを焼きつくさんばかりの勢いで燃えさかっていた。
 愛娘トーヴェが元夫ヤンネとと共にバリに旅立ち、寂しさをこらえつつ少女たちの事件を追うモーリン。またしてもリンショーピンに邪悪が解き放たれたのか。
 移民の若者によるレイプ事件? 同性愛者による犯行? 次々と浮かぶ可能性に、夏の休暇で人員不足のなか、必死で捜査を進める捜査員たち。だがそんな彼らの努力を嘲笑うようにまたしても犠牲者が。
 犠牲となった少女たちの声はモーリンに届くのか。

 世界25カ国で出版、本国で150万部突破。スウェーデンミステリ界を震撼させた人気シリーズ第二弾。


冬の生贄 上
書籍の詳細を見る
冬の生贄 下
書籍の詳細を見る
殴らないで。
おねがい。
この寒い真っ白な中に、ぼくを立たせたままにしないで……。
ぼくが消えていくのがわからないの?
扉の外にいるのは、きみたち? それとも死?
それが誰だとしても、優しくしに来たのだと言ってくれ。愛をもって来たのだと。
そう約束して。
絶対に。
約束して――。


 凍てついた雪野原。地平線に立つ楢の大木の美しく伸びた枝には、奇妙な物体がぶら下がっていた。百五十キロはありそうな、血だらけの裸の身体。凄まじい暴力のあと、あまりに異常な現場。あたかも北欧の異教の神々への生贄のような。
 リンショーピン市警犯罪捜査課の警部補モーリン・フォシュは、厳寒のなか、この奇怪な事件を調べ始める。
 被害者はどうやら近所でつまはじきにされていた男性らしい。子どもたちからも、からかいやいじめの対象にされていたこともあるという。
 次第に明らかになる被害者の悲惨な境遇、凄惨な過去。複雑に絡まりもつれ合う家族の愛憎。一つまた一つと明るみに出る過去の痛ましい出来事。

 モーリン自身、早すぎる結婚と出産、そして離婚を経験している。ひとり娘のトーヴェは思春期の難しい年頃だ。付き合っている彼氏がいることも打ち明けてくれていなかった。モーリーン自身別れた夫ヤンネに心を残しつつも、恋人未満の仲の敏腕新聞記者がいる。娘との関係に悩みながら、モーリンは捜査を続ける。

 スウェーデンミステリの新しい才能と、イギリス、フランスでも話題沸騰。絵のように美しい北欧の四季を背景に描かれる、モーリーン・フォシュ・シリーズ開幕。

(2013年3月5日/2015年12月7日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

ミステリ・SF・ホラー・ファンタジーの専門出版社|東京創元社