今月の本の話題

2013.02.05

家財道具売り払ってでも読んでください。現代英国ミステリの女王の新境地にして最高傑作!!! ミネット・ウォルターズ『遮断地区』[2013年2月]

遮断地区
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 バリケードによって封鎖された団地で、2000人規模の暴動が発生。火焔瓶で武装した暴徒たちが襲いかかってくる……。そんな状況で、あなたならどうしますか?

 デビュー作の『氷の家』でいきなり英国推理作家協会(CWA)最優秀新人賞を獲得。続いて『女彫刻家』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長編賞を、『病める狐』でCWA最優秀長編賞を受賞。名実共に現代英国ミステリの女王と言われるミネット・ウォルターズの新境地にして最高傑作をお届けします!

* * *

バシンデール団地に越してきた老人と息子は、小児性愛者だと疑われていた。ふたりを排除しようとする抗議デモは、彼らが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪したのをきっかけに、暴動へと発展する。団地は封鎖され、石と火焔瓶で武装した二千人の群衆が襲いかかる。往診のため団地を訪れた医師のソフィーは、暴徒に襲撃された親子に監禁されてしまい……。

 新境地にして最高傑作。本作の翻訳原稿をはじめて読んだとき、真っ先に浮かんだフレーズです。ものすっごくサスペンスフルな展開で驚きました。読んでいるあいだずっと、「何かが起きる!」という不安感に支配され続け、そしてラストで起こるカタストロフィがとてつもなかったです。500ページを超える長編なのですが、1日半で一気読みしました。

 バシンデール団地、通称アシッド・ロウ。アシッドというのは麻薬の一種である「LSD」を、ロウは「街、通り」を意味します。教育程度が低く、ドラッグが蔓延し、争いが日常茶飯事の場所――。そんなイギリス社会の底辺とも言える団地に、小児性愛者が越してきたという不穏な噂が広まります。そしてそれは彼らを排除しようとする抗議デモに繋がり、はては火焔瓶を持った暴徒が集結する暴動へと発展します。その原因となった、十歳の少女エミリーの失踪。小児性愛者と疑われている親子の家へ往診に行った医師ソフィーの監禁。多数の事件が見事なまでに緻密に絡まり合っているので、ページをめくる手を止めることができません。

 かなりスピーディーな展開なのに、登場人物ひとりひとりの人間性が丁寧に描かれ、人間という生き物の本性が暴き出されています。“ウォルターズらしさ”をまったく失わず、それでいて新鮮な読み心地になっている作品だと思いました。

 「こういう作品の翻訳原稿が、日本で最初に読めるなんて、編集者になってよかった! と思いました」

 翻訳された成川裕子先生にお送りしたメールの一文です。もう本当に、とにかく面白い作品ですので、家財道具売り払ってでも読んでください!!! 文庫なので売り払わなくても読めます! 2月27日ごろ発売ですので、どうぞよろしくお願いいたします!

(2013年2月5日)




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