今月の本の話題

2014.05.08

フィンランドで一番人気のミステリ〈マリア・カッリオ〉シリーズ第三弾。『要塞島の死』レーナ・レヘトライネン[2014年5月]


要塞島の死
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『要塞島の死』(2014年5月刊)

 日本でも最近は育児休暇後の職場復帰が注目されています。
よその国ではどうなっているんだろう? 福祉先進国北欧のフィンランドでは?
 そんな疑問に答えてくれるのが本書。

 全然作『雪の女』で妊娠がわかり、前作『氷の娘』では妊娠中にもかかわらず果敢に捜査に挑んだ、小柄で(といっても160センチ以上あります)赤毛の女性刑事マリア。出産、育児休暇を経てようやく仕事に復帰するのが本書です。

 育児休暇の最後を利用して、夫と娘と共にレードシャール島を訪れたマリア。
 かつて要塞のだったレードシャール島は、今は船舶塗料メーカー、メリヴェーラ社が購入し、一般に開放していた。
 島でマリアが会ったのはメリヴェーラ家の当主ユハ、妻のアンネ、息子のイリ、娘のリーッカ、そしてリーッカと年の離れた恋人で元オペラ歌手のタピオ、そしてユハの異母弟で何故かマリアが心惹かれたミッケ(ちょっとスナフキンっぽい)。
 だがマリアが島に行きたかった理由のひとつとして、実は昔の恋人がそこで事故死を遂げていたことがあった。野鳥が好きだった熱心な鳥類学者ハッリ。なぜ彼はこの島で死んだのか……。
 島から帰ってからも、マリアとメリヴェーラ一族との縁は切れなかった。イリが動物愛護のデモに参加し騒ぎを起こし、さらに経営者である当主ユハがハッリが死んだのと同じ崖の下で死体となって発見されたのだ。
 産休明け、警部に昇進したマリアが因縁の島で起きた事件調査に奔走。
 マリアと夫の育児も興味深い、フィンランド人気ナンバーワン作家のシリーズ第3弾。




氷の娘
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『氷の娘』

 フィギュアスケートはお好きですか?
 氷の上で回転し、ジャンプし、ステップを踏む。ウィンタースポーツの華ともいえる華麗な演技。日本では近年とても盛んで、ファンも多いですが、著者レーナ・レヘトライネンも、熱心なファンとのこと。そんな著者のフィギュアスケートへの愛が詰まったのが本書。

 幼い男の子ふたりを引き連れ、やっとの思いで買い物を終えた女性が、駐車場に停めてあった車のトランクを開けると、そこには少女の死体が……。暴行を受けて殺害されたらしいその少女は、将来を嘱望されているフィギュアスケート界の若手ホープ、ノーラ。
 上司タスキネンの娘が同じフィギュアスケートの選手のため、タスキネンと一緒につい数日前ノーラの素晴らしい演技を観たばかりのエスポー警察の巡査部長マリアは、ショックを隠せない。
 才能豊かで恐ろしく気が強かった、氷上のプリンセスを殺したのは誰? 
 容疑者として、ペアを組んでいるハンサムな男性スケーター、ヤンネや、エスポー市フィギュアスケート協会理事ウルリカ、そしてノーラの母親につきまとっていたストーカー男テラスヴォリが浮上するが……。
 産休目前のマリアが大きなお腹をかかえて、ノーラを巡る人間関係に捜査のメスを入れる。フィンランドで人気ナンバーワンの〈マリア・カッリオ〉シリーズ第二弾。




雪の女
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『雪の女』

 フィンランドといえば、何を思い浮かべますか? サンタクロース? オーロラ? 白夜? それともムーミン?
 そんな、北の果ての国フィンランドから、新しいミステリをご紹介します。
小柄で赤毛の元気な女性刑事マリアと警察の仲間が活躍するシリーズ。フィンランドでは〈推理の糸口賞〉受賞、また〈刑事ヴァランダー〉シリーズのヘニング・マンケルや『湿地』のアーナルデュル・インドリダソン、〈ミレニアム〉のスティーグ・ラーソンも受賞した、スウェーデンの〈ガラスの鍵賞〉にもノミネートされるなど、フィンランド国外でも人気が高まっています。

 エスポー警察の女性刑事マリアは、有名なセラピストが開いた女性限定のセラピーセンター、ロースベリ館での講演を依頼される。
 そしてその講演の数週間後、館の女主人であるセラピストが行方不明になり、雪深い森で死体で発見された。彼女はなぜ厳寒の中、そんなところまで歩いていったのか? 当時館に滞在していたのは、なにやら訳ありな女性ばかり……。

 新しい北欧ミステリの世界、どうかお楽しみ下さい。
 訳者あとがきをお読みになると、フィンランドという国がわかって、物語を読む楽しみが深まります。

(2013年1月8日/2013年9月5日)




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