今月の本の話題

2012.12.05

これほど愛すべき語り手がかつてミステリ界に存在しただろうか? スペンサー・クイン/古草秀子訳『 チェットと消えたゾウの謎』[2012年12月]


チェットと消えたゾウの謎
書籍の詳細を見る
「昨日の夜、おまえは僕を命拾いさせてくれたんだよな(ユー・セイブド・マイ・ベーコン)」とバーニー。
 ベーコン? 昨日の夜、ベーコンがあったのか? チートスはあったけれど、それだけだった。このぼくがベーコンを見逃したのか?

あの愛すべき探偵犬、チェットがまた帰ってきましたよ。

今回は、サーカスから消えたアフリカゾウとゾウ遣いを捜すことになったのだ。
依頼人から貰ったチケットで、バーニーが息子のチャーリーとチェットとともに、サーカスに行ってみると、「本日休演」の張り紙が。
人気者のゾウがゾウ遣いとともに失踪したという。
依頼者はゾウ遣いのパートナーである道化師。そしてバーニーの息子チャーリーの「しんぱいじゃないの?」という言葉もあったし……。
あんな大きいゾウが誰にも見られずに消えた?! 
サーカス撲滅を訴える動物愛護団体が絡んでいるのか?
それとも、身代金目当ての誘拐なのか?
事態は思いも寄らぬ展開を見せる。メキシコの 平原をチェットが駆ける! このシーン圧巻です。わおっ。


そして、犬らしさは本書でも全開です。

腐った卵みたいないやなにおいが、まだ鼻にまつわりついていた。それを振り払おうとして鼻から勢いよく息をはき出したら、妙な音が漏れてしまったが、その音が気に入ったので、もう一度やってみた。
「疲れたのか、ビッグガイ?」
 疲れたかって? ぼくは元気いっぱい、やる気満々、気分は最高だ。

僕の後ろからそよ風が吹いてきた。振り返ってみると、尻尾が激しく揺れていた。最高に幸せなことがあったのに違いない。


NYタイムズ・ベストセラー・シリーズの傑作をお見逃しなく。

(2012年12月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

ミステリ・SF・ホラー・ファンタジーの専門出版社|東京創元社
バックナンバー