今月の本の話題

2012.11.05

ウィットブレッド賞受賞作家が描き上げる奇妙で不確実な世界。ケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』[2012年11月]

世界が終わるわけではなく
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『博物館の裏庭で』で、ウィットブレッド賞を受賞し、日本でも2008年に刊行されて多くの読者を獲得したケイト・アトキンソン。彼女の短編集を海外文学セレクションの一冊としてお届けします。

 ゆるやかに連関した奇妙な味わいの12の短篇。
 舞台はどこなのでしょう。エディンバラ? どうやら戦時下。通りでは爆弾が炸裂、博物館の収蔵品は盗み出され、夜間には外出禁止令が発令される世界。
 そんな中、一人の女性は拾った猫を可愛がり、ふと気がつくと、人間並に大きくなったその猫が、ソファのとなりで足を組んでテレビを眺めているではないですか。そして……!!!
 かと思えば、交通事故で死亡した女性が、そのままこの世にとどまり、残された家族を見守ることになり……、真面目な青年は、悪さばかりする自分のドッペルゲンガーの存在を知り……等々、どれもがなんとも不思議な物語。
 庄野ナホコさんのカバー・イラストが見事にその雰囲気を伝えてくださっています。
 秋の夜長に読書の楽しみを味わうには、最適な一冊。こんな世界もあるのです。是非是非、アトキンソン・ワールドに足を踏み入れてみてください。

「わおっ、猫だ! 巨大な猫だ! わんわんわん」こらこら、チェット、君の出番は来月ですよ。「あれ? ぼく、吠えてたのか……。ぼくが警察犬になれなかったのは、猫がらみのちょっとしたことがあったからなんだ、だから猫というとつい興奮してしまって」

失礼致しました。スペンサー・クインの『チェットと消えたゾウの謎』については、また来月。お楽しみに。

(2012年11月5日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

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