今月の本の話題

2012.09.05

ごく普通の少女が遭遇する空想科学世界の完全犯罪 芦辺拓『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』[2012年9月]

スチームオペラ
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蒸気とエーテルを動力源とする超科学都市に住む少女エマ・ハートリーは、自分の進路に頭を悩ませていた。徒弟制度のあるこの世界では、学生はぞれぞれ興味のある分野に弟子入りして、未来の仕事を決めるのだ。 “怒りんぼサリー”こと親友(というにはちょっと微妙な間柄である)のサリーは、既にいくつもの職を体験して、着実に成果を上げているというのに……。
ある朝エマは、空中船の船長をつとめる父タイガーが帰還したという報せを目にして、着水が予定されている倫敦港へと向かう。空中船に入り込んだエマは、そこで憧れの名探偵バルザック・ムーリエと謎の少年に出会うが、それが自分の先行きに多大な影響を与えることになるとは、その時の彼女は知るよしもなかった。

* * *

……と、簡単に本書のあらすじを紹介しましたが、まずご注目いただきたいのは、本書の第一話の冒頭で活写される蒸気都市の景観です。高層建築と金属チューブ、歯車と蒸気で駆動する大都市を少女が駆け抜けてゆく様は、まさに圧巻の一言。カバーに描かれる壮麗なビジュアルを緻密に体現するこの箇所は、サイト内の「立ち読み」でもお読みいただけるようになりますので、ぜひごらんください。

 あたかもヴィクトリア朝のロンドンの如き、懐かしくも新しい蒸気機関都市を舞台に繰り広げられる、スチームパンク+ボーイ・ミーツ・ガール+本格ミステリという前代未聞の冒険譚、著者の新境地にご期待ください。

(2012年9月5日)




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