今月の本の話題

2012.08.06

村には、決して語られない「記憶」があった。MWA賞受賞の壮麗なゴシック・ミステリ!S・J・ボルトン『毒の目覚め』[2012年8月]

毒の目覚め(上)
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蛇ぎらいでもだいじょうぶ。
謎に満ちた壮麗なゴシック・ミステリ登場!


 2011年、『IN★POCKET』2011年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/作家部門の第4位に輝いた『三つの秘文字』の著者による最新作、『毒の目覚め』をお届けします! 

*あらすじ
その夏、英国の小さな村では蛇が異常発生していた。獣医のクララはある老人の死に疑問を感じる。死因は蛇の毒だが、1匹に咬まれたにしては毒の濃度が高すぎるのだ。さらに近所の家で、世界で最も危険と言われる毒蛇を発見する。数々の事件は、何者かの策略なのか? 言い知れぬ恐怖と謎に挑む女性獣医の姿を圧巻の筆致で描きMWA賞受賞に輝いた、壮麗なゴシック・ミステリ。

* * *
毒の目覚め(下)
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 このあらすじを読んで「蛇はちょっと……」と思った方、ご安心ください。担当編集である私もどちらかというと苦手だったのですが、主人公の女性獣医の視点で蛇が美しいものとして描かれているので、この作品の描写は全然だいじょうぶでした。むしろどんな姿をしているのか気になってGoogleで画像検索をしてしまったくらいです。この作品を読んで、蛇というのはものすごく神秘的で美しく、謎めいた存在なのだなぁと認識を新たにしました。

 そして本書は、なにより舞台設定がすばらしいのです! 世間から忘れ去られたようなイギリスの田舎の小村で、豊かな自然のほかに廃墟となった教会や、荒れ果てた大きなコテージが点在しています。暗く、恐ろしい雰囲気は、ミステリの舞台にぴったり。特に、ガーゴイルやキマイラの彫像が置いてある廃墟となった教会にクララが足を踏み入れるシーンは、とてつもない緊迫感にあふれており、不気味極まりないです。ゴシック・ミステリとして前作よりいっそう面白くなっています!

 そんな魅力的な舞台で起こる数々の不可解な事件は、何者の企みによるものなのか。その謎を彩るのは、主人公クララの過去です。野生動物病院で働く彼女は、人里離れた田舎に住み、近所の人々とほとんど関わりを持とうとぜす、買い物はすべて通信販売を利用しています。とにかくほとんど人とふれあおうとしないのはなぜなのか? どうやら顔にひどい傷があるようなのですが、その原因もなかなか明かされません。彼女の抱える謎が物語を牽引し、もうとにかくページをめくる手が止まらなくなってしまうのです。この作品を読むのは、ベッドに入る前だけはやめたほうがいいと思います。先が気になってしまい、徹夜してしまうこと間違いなし!

 著者のS・J・ボルトンは、処女作の『三つの秘文字』以来、イギリスの田舎や独特の伝説・風習の残る土地を舞台にした緊迫感あふれるゴシック・ミステリを発表しています。作品すべてが数々のミステリ賞にノミネートされている、現代英国ミステリ界を代表する作家です。第2作にあたる本書はアメリカ探偵作家クラブ(MWA)のメアリー・ヒギンズ・クラーク賞を受賞しました。ちなみにボルトンさんはこのメアリー・ヒギンズ・クラーク賞に、前代未聞、なんと4年連続でノミネートされています。その他、英国推理作家協会賞のゴールドダガーや図書館賞、バリー賞の最優秀英国ミステリ部門にもノミネートされています。また、14カ国で翻訳出版されるなど、海を越えて世界各国で高く評価されている作家です。

『毒の目覚め』は8月25日ごろ発売です。どうぞお楽しみに!!
(2012年8月6日)




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