今月の本の話題

2017.09.14

ヨーロッパミステリ大賞、バリー賞受賞。世界のミステリ界をリードする、アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』[2017年9月]


●最新刊『湖の男』

 その白骨は、干上がった湖の底で発見された。発見したのは、たまたま湖の調査に訪れたエネルギー庁の研究員。湖の水位が異常な速さで下がっている原因を調べているところだった。もし水位が下がることがなければ、その骨はずっと発見されることはなかったろう。
 その頭蓋骨には殴られたらしい穴があき、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられていた。どうやらかなり前の事件らしいことがわかり、行方不明事件に執着する捜査官エーレンデュルが捜査にあたることになった。
 検査の結果、その人骨は成人男性で、1970年頃に湖に遺棄されたことが判明した。その前後数年で、アイスランド全国で行方不明になった男性は八人、そのうち五人がレイキャヴィクとその近郊に住んでいた。
 エーレンデュルらは、丹念な調査の末、ひとつの失踪事件に行き当たった。アイスランド全土をまわって農業機具を売っていたセールスマンが、婚約者を残し消息を絶ったのだ。調べていくうちに、その男が実は偽名を使っており、そんな名前の人物はアイスランドには存在していなかったことがわかる。男はいったい何者で、何故消されたのか? 
 過去に遡るエーレンデュルの捜査が浮かびあがらせたのは、時代に翻弄された哀しい人々の真実だった。

 事件そのものもさることながら、毎回描かれるエーレンデュル自身の抱く哀しみ、家族との葛藤も読みどころのひとつ。毎度読者をひやひやさせる娘のエヴァ=リンドだけだはなく、今回はこれまで名のみ登場していた息子のシンドリ=スナイルも出てきます。エーレンデュルとエヴァ、エヴァとシンドリ、シンドリとエーレンデュル、親子とは、そして家族とは、考えさせられる作品でもあります。

 ヘニング・マンケル亡きあと、北欧ミステリを、いや世界のミステリ界をリードする存在になった著者のシリーズ第四弾、どうぞお楽しみ下さい!



声
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『声』

 クリスマスシーズン、観光客で賑わうアイスランドの首都レイキャヴィクの高級ホテル。そのホテルの地下室で、一人の男が殺された。ホテルのドアマンだという男は、ボランティアで参加する予定だった子どものためのクリスマスイベントのサンタクロースの扮装のまま、めった刺しにされていた。男の名はグドロイグル、ホテルのドアマンとして20年以上も勤め、最近解雇されたあともホテルの地下の一室に住んでいたという。部屋にはシャーリー・テンプルの古い映画のポスターが貼られているだけ、家族の写真一枚なく、親しい友人もないらしい。地味で孤独な男。
 捜査官エーレンデュルはホテルの一室に陣取って、早速事件の捜査を始めた。そして調べ進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。
 一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。自らも癒やすことのできない傷を抱えたエーレンデュルが到達した悲しい真実。

 スウェーデン推理作家アカデミー最優秀翻訳ミステリー賞、フランス推理小説大賞翻訳作品部門、813賞最優秀翻訳長編部門受賞。『湿地』『緑衣の女』に続くシリーズ第3弾。



緑衣の女
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『緑衣の女』

 男の子が住宅建設地から拾ってきたのは、人間の肋骨の一部だった。
 レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、同僚のエリンボルグ、シグルデュル=オーリとともに、人骨発見の通報を受けて現場に駆けつける。
 事件にしろ、事故にしろ、どう見てもその骨は最近埋められたものではないらしかった。エーレンデュルは人骨の掘り起こしを考古学者スカルプヘディンのチームに依頼し、同時進行で人骨に関する捜査を始める。
 現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍、次いでアメリカ軍のバラックも建っていたらしい。サマーハウスの関係者の骨なのか? それとも軍で何か事件があったのか? 
 数十年前のこととて、聞き込みはいっこうにはかどらず、考古学者の慎重なやり方のせいで、人骨のほうもなかなか全貌がわからない。男なのか、女なのか、いったい何歳くらいなのか。
 だが粘り強く調べるうちに、次第にサマーハウスの住人の過去が浮かび始める。
 付近の住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年封印されていた哀しい事件が、エーレンデュルの捜査でついに明らかに……。

 世界中が戦慄し、涙した。究極の北欧ミステリ登場。
 ミステリ界に旋風を巻き起こしたあの『湿地』はほんの前奏曲にすぎなかった。
 CWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞の最高傑作が、ついにそのヴェールを脱ぐ。




湿地
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『湿地』

雨交じりの風が吹く、十月のレイキャヴィク。北の湿地(ノルデュルミリ)にあるアパートで、老人の死体が発見された。被害者によって招き入れられた何者かが、突発的に殺害し、そのまま逃走したものと思われた。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。
だが、現場に残された三つの言葉からなるメッセージが事件の様相を変えた。
計画的な殺人なのか?
しだいに明らかになる被害者の老人の隠された過去。
レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルがたどり着いた衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相とは。

世界40ヵ国で紹介され、シリーズ全体で700万部突破。
ガラスの鍵賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞を受賞した、いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸。


国境も人種も関係ない、刑事たちは刑事だった。「湿地」は、警察小説の普遍性を証明した作品かもしれない。
――堂場瞬一 

北の湿地に埋められていた過去が、思いがけない真実を照らす。この圧倒的な牽引力。警察ミステリの本場から、ついに真打ちが登場した。
――大森望 

インドリダソンは近年のヨーロッパで最高の作家のひとりだ。ヘニング・マンケル、カリン・フォッスムに勝るとも劣らない。
――マーガレット・キャノン「グローバル&メール」

インドリダソンは文字通り、瞬時にして北欧ミステリ作家のトップにのぼりつめた。
――「ブックリスト」

このシリーズによってインドリダソンは現代ミステリの頂点に立った。彼はストーリーテリングの達人であり、一見とっつきの悪い表面に隠された複雑な人間性を見事に描く天才である。
――「ガーディアン」

最高に面白いミステリを読みたい? だったらインドリダソンを読め。
――ジョン・ハーヴェイ

インドリダソンは世界を席巻した。理由は簡単、彼の作品は本物で、魅力に溢れ、詩的で、忘れがたい。
――ハーラン・コーベン

レイキャヴィクがヨーロッパの犯罪の巣窟などと考える必要はない。だが、アーナルデュル・インドリダソンによってこのアイスランドの首都はイアン・ランキンのエディンバラのように、暗く恐ろしく、禍々しい場所となった。
――マーセル・バーリンズ「タイムズ」

(2012年6月5日/2017年9月14日)



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