●最新刊『ゴーストライター』

 芝居の最前列に座っていたみすぼらしいその男は、暗闇のなかで喉を掻ききられて死んでいた。男は上演中の舞台「真鍮のベッド」の脚本家だった。じつはこの芝居、前日にも上演中、しかも同じ最前列の席で同じ時刻に女性が死亡していたのだ。女性は心臓発作で自然死だったが、今日死んだ男は間違いなく殺されていた。これは偶然? それとも……。

 駆けつけたニューヨーク市警ソーホー署の刑事マロリーとライカーは早速捜査を開始する。だが、劇場の関係者は、主演俳優から劇場の“使い走り”、劇を批評する評論家に至るまで全員が、一筋縄ではいかない奇人変人ぞろい。おまけに、殺された脚本家とは別の、ゴーストライターなる謎の人物が、日々勝手に脚本を書き換えているという。

 姿を見せないゴーストライターの目的は? そして殺人事件との関わりは? 氷の天使マロリーが、舞台の深い闇に切り込む。好評シリーズ最新刊。


『生贄の木』

 セントラル・パークの草地で、その女の子は幼児たちの集団の中に現れた。
 くるくる渦巻く赤い髪、薄汚れてはいるがクリームみたいに白い肌、そのほほえみは桁外れに大きく、上を向いた鼻とふっくらした唇との間隔が思いきり離れている。仕上げは先が鋭く尖った顎で、まるでエルフか小鬼(インプ)だ。
ココと名乗るその少女を保護したのは、マロリーだった。ココが汚れきっているにもかかわらず、愛情を求めて駆けてくるその小さな両腕の抱擁に耐え、ほほえみかけさえした。  ココは一緒に暮らしていたレッドおじさんが消えてしまったので、セントラル・パークに広がる森《ランブル》で探していたらしい。

 その後《ランブル》の森の中で、袋に入れられて木から吊されていた三人の人間が発見された。小児性愛者、イカれたパーティーガール、そして狂気に冒された配給所の聖女。一人は手遅れ、一人は助かり、そして一人は瀕死の状態だった。死んだ男は、ココのレッドおじさんだった。ココは犯罪目的で誘拐されていたのか? だとすれば、犯人の手がかりをもっているかもしれない。ココの繊細な心を思いやるチャールズと対立しつつも、マロリーはココに犯人を思い出させようとする。

 マロリーと妖精のような女の子との奇妙な絆を描く、好評シリーズ10弾。


『ルート66〈上下〉』

「キャシーよ、迷子になっちゃったの」
 そう言って、マロリーは、何度も夜中に長距離電話をかけ続けた。ストリートチャイルドだったマロリーが、マーコヴィッツに引き取られてから、何年も続いた謎の行動。その謎がついに解けるときがきた。

 何事にも動じない氷の天使、ニューヨーク市警刑事キャシー・マロリー。
 アッパーウェストサイドにある、マロリーのアパートメントの居間に、胸に銃弾が撃ち込まれた女性の死体が一体。自殺か他殺かはわからない。
 その頃、肝心の部屋の主はシカゴのある地点を目指してひたすら車を飛ばしていた。
 そして相棒のライカーは、マロリーが使ったクレジットカードの記録をたよりに、彼女の足取りを追っていた。
 マロリーは、廃線となった旧ルート66を辿っていた。ノスタルジックな古きよき時代の名残、彼女とはおよそ縁がなさそうな道を。彼女は何かを追っているのだ……。

 行方不明になった幼い子どもの親たちが集まり、ルート66上を進む奇妙なキャラバン。彼らを率いるのは、もと神父で心理学者でもある老人だ。
 だがキャラバンのメンバーの一人が殺された。死体の手は切り離され、代わりに置かれていたのは古い子どもの手の骨。
 州をまたいで進むキャラバン。狙われるメンバーたち。ルート66上で幼い子どもが殺され埋められた事件を追うFBI捜査官たち。州警察、FBIが錯綜する現場。
 マロリーは狙われる幼い子どもを守り、卑劣な犯人を捕らえることができるのか?

 そしてマロリーが自身の旅の果てに見たものは?


●『ウィンター家の少女』

 キャシー・マロリー、ニューヨーク市警刑事。
 完璧な美貌、コンピューター・ハッキングにかけては天才的な頭脳をもち、他人に決して感情を見せることのない氷の天使。

 ニューヨーク・シティ、セントラルパーク西通りに威風堂々と聳える十九世紀のファサードをもつ屋敷、ウィンター邸。そのウィンター邸でひとりの男が殺された。男は保釈中の殺人犯で、裁縫用の鋏で胸を刺されていた。
 事件当時屋敷にいたのは七十歳の老婦人ネッダ・ウィンターと、その姪で、子どものように小柄な聖書マニアのビッティだけ。この二人の女のどちらかが、侵入者を殺したのか?
 捜査のためにウィンター邸を訪れたマロリーと相棒のライカーは驚愕する。この老婦人ネッダこそ、五十八年前この屋敷で九人の人間が殺された“ウィンター邸の大虐殺”以来行方不明になっていた女性だった。殺人の容疑がかかっていたが、ネッダは当時十二歳。果たして彼女が事件の犯人だったのか? そして虐殺事件の直後から今までの五十八年間、彼女は今までいったいどこにいたのか? 今回の事件と過去の事件に繋がりはあるのか? 
 血塗られた過去を閉ざした館。謎が謎を呼ぶ迷宮のような事件に、氷の天使マロリーが挑む。


陪審員に死を
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●『陪審員に死を』

 キャシー・マロリー、ニューヨーク市警刑事。
 完璧な美貌、コンピューター・ハッキングにかけては天才的な頭脳をもち、他人に決して感情を見せることのない氷の天使。

 彼女の相棒ライカーは、捜査中に四発もの銃弾を受け瀕死の重傷を負った後遺症で、現在傷病休暇中だ。弟の《ネッド事件現場清掃会社》を代わりに経営し、警察に復帰する気がないかのようなライカーの態度にマロリーの苛立ちが募る。
 そしてジョアンナ・アポロ。ライカーの会社の清掃員ジョセフィン・リチャーズとして働く、亀のように曲がった背と優美な長い脚、温かくやわらかい大きな茶色の目をした、謎の女性ジョアンナ。彼女の周辺にはFBI捜査官の影がちらつき、彼女に嫌がらせをしていた浮浪者バニーは何者かに惨殺される。
 折り紙つきの変人やアーティストの隠れ家、チェルシー・ホテルの一室に、ニューヨーク一攻撃的な猫と暮らすジョアンナ。ライカーが心を寄せる彼女は何者なのか?

   氷の天使VSニューヨーク一攻撃的な猫マグス。ライカーのファーストネームが遂に判明! マロリーシリーズ最新刊。


吊るされた女
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●『吊るされた女』

 マロリーの相棒の刑事ライカーの情報屋だった娼婦が、何者かに吊るされた。美しかった金髪は無惨にも切られて口に詰めこまれ、周囲には無数のハエの死骸。犯人はわざわざ犯行現場にハエを持ってきたのか?

 勝手に臆測をめぐらす他の警官たちを尻目に、マロリーはこの事件を連続殺人鬼の仕業と断定する。
 それは、コンピューターにも入っていない古い未解決事件のひとつ。マロリーの育ての親、故マーコヴィッツが口にしたことのある事件だった。確かに手口は一致している、だが……。

『クリスマスに少女は還る』で日本の読書界に衝撃のデビューをはたし、『愛おしい骨』で『このミステリーがすごい!』1位に輝いた著者のライフワーク・シリーズ、ミステリ史上最もクールなヒロイン、キャシー・マロリーが連続殺人鬼に挑む。

(2019年3月4日/2012年6月5日)




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