今月の本の話題

2012.05.08

第二次世界大戦期のヨーロッパを舞台に贈る 歴史群像劇にして冒険小説の逸品 平谷美樹『ユーディットXIII(ドライツェーン)』[2012年5月]

新進気鋭の画家として将来を嘱望されていた日本人青年・不破の人生は、パリの美術館に飾られた一枚の絵画によって大きく狂わされた。この絵を超える作品を、自分は決して描くことはできない――絶望から絵筆を折った不破は、酒に溺れ、ヨーロッパを流浪する。
その後ある契機から間諜となって活動していた不破は、己の運命を変えた絵画《ユーディットXIII》がナチスに略奪されたことを知り、英国軍情報部とつながる美術商の目論む絵画奪還作戦に加わることを決意する。だが、その作戦の背後にはある極秘計画が隠されていた。英国首相チャーチルの思惑と、ドイツ国防軍内のー派の思惑が錯綜する、無謀な作戦に身を投じた不破の運命は――

画家として大成するという夢に破れて間諜となった不破のほか、軍の方針に反撥して脱走し、虚無的に生きる元フランス軍兵士バラティエ、「水晶の夜」を生き延びてレジスにタンス活動に身を投じるユダヤ系ドイツ人シュミット、不破の部下である元日本軍兵士・柴田ら、過去に呪縛され故郷を喪った男たちが、それぞれの矜持と目的のため、列強の思惑が渦巻く陰謀に身を投じる。小松左京賞作家が挑む新境地!

(2012年5月8日)




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