今月の本の話題

2012.06.05

ミステリアスな学園ファンタジー マギー・スティーフベーター『バラッド――妖精のミューズに捧げる物語詩――』[2012年6月]

●最新刊『バラッド――妖精のミューズに捧げる物語詩――』(2012年6月刊)

 あたしはいつだって狩りをする側だった。ほしいものを見つけたら、跡をつけ、においをかぎ、手に入れる。
〈もの〉というのはもちろん、若くて才能のある男。美しければ美しいほどいい。それだけ魅力的な取引になる。彼らが死ぬまで見ていることになるのだから。美形にこしたことはない。あたしは残酷ではない。むしろ気前がいい。彼らが熱心に求めるものをあたえてきたのだから。美。インスピレーション。死。あたしは彼らの平凡な人生を非凡にしてあげた。どの男にとっても、あたしとの出会いは人生最高のできごとだった。
 だから、あたしは狩人というよりも恩人なのだ。

 オレが転校したソーンキング・アッシュ音楽院は、オレたち才能ある学生を集めて英才教育をほどこし、音楽的才能をのばしてくれるはずだった。
 なのに実際転校してみれば、オレが専攻しているバグパイプの講師がいない。じゃあなんでオレに奨学金を出したんだ? 
 わけがわかんないうえに、一緒に転校してきた片思い中のハープ奏者ディーもなにやら様子がおかしく、滅多に会えない。オレのフラストレーションはつのるばかりだ。
 そんなとき、オレはひとりの女の子に出会った。ヌアラと名乗る不思議な彼女はそもそも人間じゃない。リャナン・シーという妖精だった。
 妖精に取り憑かれたジェームズ。才能ある音楽家の卵を集めた学校の秘密は?

 アイルランドの妖精と伝承と音楽が織りなすミステリアスな学園ファンタジー。



『ラメント――妖精の騎士に捧げる哀歌――』(2012年1月刊)

あなたの夢に行きつ戻りつ
忘れられないハープの音に合わせ
あなたが亡くなったあの日
わたしは心であがなった
あなたの夢に行きつ戻りつ
わたしの心は引き裂かれた
もうこの歌をうたうことはない

もうハープの音を聞くことはない……

 もう、こんなのいや。人前で演奏しようとするたびに胃がむかむかして、トイレに駆け込むはめになる。
 コンクールでの演奏を前に緊張のあまりもどしてしまったハープ奏者のディアドラ。そんな彼女を助けてくれたのは、不思議な若者ルークだった。
 ルーク・ディロン、昨夜の夢に出てきた美しく不思議な若者。あたかも魔法にかけられたかのようにルークに導かれるまま舞台にあがるディアドラ。彼女のハープとルークのフルートは聴衆を魅了した。
 美しい容姿に謎めいた雰囲気。誰も彼の名前を覚えられない。ルークの出現を機に、ディアドラの周辺に次々と不気味なことが起こり始める。
 アイルランドの音楽と伝承に彩られたロマンティックファンタジー。
(2012年1月5日/2012年6月5日)


 

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