今月の本の話題

2011.12.05

若き英雄クー・フリン対強き女王メーヴ。古代アイルランドの英雄譚。キアラン・カーソン『トーイン クアルンゲの牛捕り』[2011年12月]

 そもそもの発端は、アイルランドはコナハト国、クルアハン砦で王アリルと女王メーヴが交わした寝物語。
 王と女王どちらがより財産をもっているか。大釜、手桶、金銀の細工物、とりどりの衣装、家畜に至るまでふたりはほぼ互角であったが、たったひとつ王の牛の群にいたほれぼれするような一頭の雄牛、真っ白い角をもつフィンヴェナハに匹敵するものを女王はもたなかった。そこで女王は使者を呼びつけ、フィンヴェナハに匹敵する雄牛をアイルランド四国じゅうを探し求めさせた。
 フィンヴェナハをこえる雄牛はただ一頭、アルスター国にいるクアルンゲの褐色の雄牛だけ。それを知った女王が、クアルンゲの褐色の雄牛をうばうべく大軍勢を招集、アルスターの地に迫った。
 メーヴ女王率いる大軍を迎え撃つアルスター国では、呪いのせいで男たちは戦うことがかなわず、ただひとり17歳の若き英雄クー・フリンが、アイルランド三国の連合軍を相手に戦うのだった。
 続々と迫る勇者猛者の軍隊の前に、超人的な力と技で立ちはだかるクー・フリンの武勲。アイルランドのイリアスとも言われる伝説の書を、現代の鬼才、『琥珀捕り』の著者詩人キアラン・カーソンが英語で語り直した、血湧き肉躍る未曾有の英雄譚。

(2011年12月5日)

 

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