今月の本の話題

2011.10.05

“早熟の天才”が放つ、青年の復讐と救済の物語――LAタイムズ最優秀ミステリ賞受賞作! マイクル・コリータ『夜を希(ねが)う』[2011年10月刊]

 血に濡れた夜がなければ
 きっと、ここへ辿り着けなかった。
 ――これは、ある青年の復讐と救済の軌跡。


『夜を希(ねが)う』の著者、マイクル・コリータをひと言で表すなら、「早熟の天才」です。1982年生まれの彼は、8歳のときにはすでに好きな作家と手紙のやりとりをしていました。その後16歳でデニス・ルヘイン(レヘイン)の傑作ハードボイルド、『愛しき者はすべて去りゆく』と出合い、作家になることを決意します。そして2003年にPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)が主催する〈私立探偵小説コンテスト〉で最優秀作に輝いた『さよならを告げた夜』でデビューします。この作品は22歳という若さで上梓したにもかかわらず、エドガー賞処女長編部門にもノミネートされました。

 若き私立探偵リンカーン・ペリーが主人公の『さよならを告げた夜』は、のちに著者を代表するシリーズとして書き継がれていきます。そしてコリータがはじめて挑戦したノンシリーズ作品、それが『夜を希う』です。本書は2009年「このミステリーがすごい!」一位を獲得したトム・ロブ・スミス『チャイルド44』ら強敵を破り、LAタイムズ最優秀ミステリ賞を受賞しています。

 本作の主人公は、作家志望の青年、フランク。彼は父の友人から「デヴィンが戻ってくる」という連絡を受け、人里離れた氾濫湖(フローウィッジ)の湖畔へ向かいます。父を裏切り、自殺へと追いこんだ男、デヴィンを殺すために――。しかし途中で車の追突事故を起こしてしまいます。事故の相手はクスリでもやっているかのように挙動不審な男で、身元を隠していました。さらに、彼は謎めいた美女とともに、湖に浮かぶ島のデヴィンのキャビンに滞在していました。彼らは何者なのか? デヴィンとの関係は? さまざまな疑問が浮かび上がるなか、フランクは旧知のFBI捜査官から、デヴィンが氾濫湖から遠く離れたフロリダで銃撃されたという情報をもたらされます――。

 予想外の方向へ疾走しはじめた復讐の行方は? フランクはおのれの正義を果たすことができるのか? 最後に、三橋曉さんの解説を引用します。

このラスト数十ページのスリリングな面白さだけで、優に冒険小説のオールタイム級ベストに匹敵するものがあるといっても過言ではない。ところが、である。物語はそこで終わらないのだ。手に汗握るクライマックスだけでは、まるで画竜点睛を欠くとでもいうかのように、衝撃の一パラグラフが待ち受ける。ここでさりげなく明かされる事の次第に、読者は心底うちのめされるに違いない。


  マイクル・コリータ『夜を希う』は10月8日発売予定です。どうぞお楽しみください。
(2011年10月5日)

 

【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

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