今月の本の話題

2013.04.05

アンドレ・ノートン賞受賞、奇想天外、究極のファンタジー イザボー・S・ウィルス『一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 怒りのフローラ』[2013年4月]

●最新刊『一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 怒りのフローラ』

 愛しのママ、ブッ殺しブレイクスピアー・アゾテ・タイニー・ドゥームへ

 あなたはバーディに殺された。連中の信じる神に生け贄として捧げられ、肉体的には祭司に、たましいは神に食われたのだと、みなそう思っています。単に殺されたというだけではなく、“この世”にも、“あの世”にも、“あわいの世”にも痕跡を残さず、わずかな生命力のかけらも、“あの世”に渡ることができなかった。パイモンでさえそう思いこみ、わたしにこんなことをいいました。「わたくしはビルスキニール屋敷の執事でございます。ハすラーさ家の人間はすべて知り尽くしております。もしあの方がバーディから逃れ、ご存命でいらっしゃるというなら、わたくしがそれを存じないはずがございません。生きてはいらっしゃいません。テスカトリポカに捧げられ、永遠に消えてなくなられたのです」
 パイモンが知ろうと知るまいと関係ない。むこうはビルスキニール屋敷の執事だけど、わたしは一家の家長で、あなたがまだ生きていると知っている。あなたの娘だもの、わからないはずがない。
 わたしの心も、頭も、内臓も、あなたは生きていると叫んでいます。
 それだから、はらわたが煮えくりかえるくらい、怒っているんです。

 わたしは半分しかフュルドラーカの人間じゃなかった。わたしの本当の母親はバックではなく、かの悪名高い〈ブッ殺しブレイクスピアー〉。バーディーに殺されたハすラーさ家の当主だったのだ。おかげでわたしまでバーディーの目を逃れるために、特殊部隊の隊員になりたいという大望を捨てて、いい子のふりをしておとなしく士官候補生になる羽目になった。ところがわたしは気づいてしまった、愛しのママは死んじゃいない。でも、じゃあ、いったいどこに隠れているんだろう? 
 これはわたし自身のためじゃない、わが祖国カリファの自由と独立のために、わたしは愛しのママ〈ブッ殺しブレイクスピアー〉を探す旅に出ることにした(もちろんバックには内緒で勝手にだけど)。

 魔法流が最高潮に達する夜に、わたしの血を使って行った魔法は成功。わたしは母親の居場所を特定することができた。なのにちゃんと場所を確認する前に、なんとクマ男に肝心の地図を持っていかれてしまったのだ。失意のあたしに追い打ちをかけるように、バーディーの国に行けという命令が下る。 〈ブッ殺しブレイクスピアー〉の娘だとわかれば間違いなく殺されるっていうのに……。
 ところがバーディの国に向かう航海の途中、船が海賊に襲われた。やっとのことで海賊から逃れたわたしは、これ幸いとばかりに勝手に行き先を変更した。行く先は苛酷なアリヴァイパ砂漠。道連れは忠実な犬フリンとクマ男、そして幽霊のタコ! 
果たしてフローラは本当の母親に会えるのか?

奇想天外、はちゃめちゃなファンタジー三部作完結。 



『一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 ほんとうのフローラ』

 やれやれ、結局なんとかあたしは、魔法執事といっしょに消えてしまったりせず、カトルセナのお祝いも無事終わった。
 パパもアルコール浸りで部屋にこもるのをやめてくれたし、なんだかすべてうまくいったみたいだった……。
 甘かった。正気に戻ったパパは、酔っぱらっていたときより始末がわるかった。規律、規律の軍隊式の毎日。上官(パパのこと)には絶対服従。そんなパパを拝み倒して親友のウードとクラブに行ってみれば、ウードは気持ち悪い石炭女に夢中。
 まったくなんてことなの。ぷりぷりして行ったトイレで、なんと便器から巨大なイカ(多分)の触手が! こっちは必死で格闘したのに、扉が開いてみれば、イカの触手は跡形もない。これじゃまるであたしがヘンみたい。
 トイレであたしをおそった巨大イカ。じつはあれが最近カリファを襲っている地震と関係があったなんて! なんとかしなくちゃ。
 ところが姉で優等生の(あたしと違って)イデンは軍を脱走しちゃうし、親友のウードは懸賞金稼ぎなんていうありえない金儲けのアイディアに取り憑かれちゃうし、まわりじゅうとんでもないことだらけ。
 人が変わったみたいに厳しくなっちゃったパパの目を盗んで、あたしはなんとかカリファを救おうとするんだけど……。
 フローラが秘密部隊究極の荒技に挑む! アンドレ・ノートン賞受賞、奇想天外な究極のファンタジー第二弾。



『一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 二番目のフローラ』

 魔力を持つ執事が名家の屋敷を切り盛りする国、カリファ共和国。
 一万一千もの部屋を持つ広大なクラックポット屋敷に住む少女フローラは、ママの命令で魔法執事が追放されて以来、荒れ果ててしまった屋敷の切り盛りにいいかげんうんざりしていた。
 陸軍大将であるママは仕事仕事でほとんど帰ってこないし、パパは塔にこもったままろくに出てきもしない(たまに出てきても迷惑なだけ)。
 そんなフローラが、ひょんなことから屋敷内の大図書室に迷いこみ、そこでとうの昔に追い出されたはずの魔法執事バレフォールに出会う。すっかり魔力の衰えてしまった執事から、自分をよみがえらせれば荒れた屋敷もよみがえり、屋敷を切り盛りする苦労もなくなると言われ、フローラは自らの生命力を分けあたえる。
 確かにバレフォールが元気になると同時に、部屋はきれいに掃除され、屋敷は息を吹き返したかに見えた。だがそこにはとんでもない落とし穴が待ち構えていた。
 一族の伝統に逆らって、カリファの正規軍ではなく秘密部隊に憧れるフローラ。海賊に憧れる親友のウードとふたりで企んだ、おしゃれ海賊奪回作戦があえなく失敗。すっかりしょげるフローラだったが、魔法執事とむすびついた自分の存在が消えかかっていると聞いてびっくり仰天。
 執事復活の鍵を求めて、家人が死んでのち怖ろしい噂の絶えないビルスキニール屋敷に、ウードとふたり決死の覚悟で忍び込む。ところがそこでフローラを待っていたのは……。
 アンドレ・ノートン賞最終候補、カーカスベスト・ブックに輝く、奇想天外、摩訶不思議なファンタジー。

(2011年6月6日/2013年4月5日)

 

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