今月の本の話題

2011.04.05

さわやかな余韻が秀逸な、著者最新作の主人公はなんと…… 樋口有介『片思いレシピ』[2011年4月刊行]

『彼女はたぶん魔法を使う』にはじまる“永遠の38歳”柚木草平の活躍を描く一連の軽ハードボイルドシリーズや、『ぼくと、ぼくらの夏』『風少女』『林檎の木の道』などの青春ミステリ、それぞれの作品群で読者を魅了し続ける樋口有介。最新刊『片思いレシピ』は、その〈柚木草平シリーズ〉に見られるハードボイルドな雰囲気と、青春ミステリに見られるさわやかな読後感、その双方が味わえるハイブリッドな内容に仕上がっています。
それもそのはず、今作の主人公は、なんと柚木加奈子ちゃん。ファンの方はおなじみですね。柚木草平の別居中の愛娘で小学6年生。通常のシリーズでは、事件の調査を進める柚木の自宅に電話をかけてきて(『捨て猫という名前の猫』など、作品によっては冒頭に登場するケースも)、あれやこれやとはっぱをかける役割を担っています。カモノハシを見るために、オーストラリア旅行をねだる加奈子ちゃんは、ファンの間でも高い人気を誇ります。今回は柚木と加奈子ちゃんの立場が逆転し、加奈子ちゃんのほうが事件に巻き込まれ……。
もちろん、柚木草平も電話にて友情(?)出演してますので、ファンの皆さんご安心を。

舞台は、加奈子ちゃんと親友の柚子ちゃんが通う学習塾。アルバイト講師が何者かに殺害されてしまい、加奈子ちゃんは柚子ちゃんのご家族とともになぜか犯人捜しに乗り出します。というのも柚子ちゃんのご家族は、学習塾のある周囲一帯でもつとに有名な名家。“町のトラブルは、我々が解決せねば”と言わんばかりのお祖父さんをはじめ、あっけらかんとしたお祖母ちゃん、ちょっと風変わりなお兄さん、年齢不詳の巨大猫と、かなり個性的。
シニカルな加奈子ちゃんと、ご家族の探偵行は果たして。そして、登場人物たちの淡い恋の行方は――。

著者の作品史上、最年少にして最強の主人公の活躍を、どうぞお楽しみくださいませ。

(2011年4月5日)

 

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