今月の本の話題

2011.03.07

ロマンスとファンタジーの見事な融合 〈フェアリーコート・シリーズ〉第3弾 メリッサ・マール『永遠の女王』[2011年3月刊]

●最新刊『永遠の女王』

 はじめからわかっていたことだった。
 愛しいアッシュリンはサマーコートのフェアリークイーン。サマーコートの力が最高潮に達する夏至の日が近づくにつれ、パートナーであるサマーキングのキーナンに強く惹かれていってしまう。そんなことは、アッシュリンがフェアリーに、それもサマーコートのクイーンになってしまったその日から、覚悟はしていたはずだった。
 それなのに、セスは人間である自らに対し、次第に物足りなさを覚えるようになっていた。自分に永遠の命さえあれば、アッシュリンと永遠の時を共にすることができるのに……。
 だが、人間を妖精に変えることができるのは、妖精たちの真髄であるフェアリー界にある、ハイコートの女王ソルチャだけ。
 一方、ウインタークイーンのドニアも、恋人であるキーナンとの関係に苦悩していた。
 冬を司る女王と夏の王、触れあうこともままならぬうえ、キーナンの心はドニアとアッシュリンの間で揺れている。もしアッシュリンの心がキーナンに傾けば、彼は自分を簡単に捨ててしまうだろう。
 夏と冬、秩序と混沌、4つのコートの思惑と力が絡み合い、恋人たちを翻弄する。
 RITA賞受賞シリーズ。ロマンティック・ファンタジーの決定版第3弾。池澤春菜解説。



『闇の妖精王』

 結び細工模様の中からこちらを見つめる漆黒のふたつの瞳、そのまわりを濃淡の黒で描かれた影のような翼が取り巻いている。真ん中には混沌の星、中心から放射状に8本の矢が飛び出し、そのうちの4本は他の4本より太い。まるでとげのついた十字架だ。
「これよ、あたしに必要なのはこれ」

 心と体に消えることのない傷を負った少女、レスリーの内に渦巻く恐怖と怒りの感情、それがダークコートの王イリアルを惹きつけた。
 負の感情を糧とするダークフェアリーだが、サマーコートに新女王アッシュリンが立って以来争いごとが減って、糧をえられずに弱体化しつつあるのだ。
 レスリーが、彼女の抱く激しい感情が必要だ……。
 一方、サマーキングの相談役ニールは、レスリーへの許されない想いに身を焦がしつつ、アッシュリンに命令されるままに秘かに彼女の身を守っていた。
 ニールはガンコナー。魅入られた人間の娘は麻薬のように彼に溺れて身を滅ぼす。
 大切な友人であるレスリーを妖精から守ろうとするアッシュリン、レスリーを想うニール、そしてダークキング。それぞれの思惑がレスリーをめぐって絡みあう。
 ロマンティック・ファンタジーの決定版、〈フェアリーコート・シリーズ〉第2弾。



『妖精の女王』
「彼女こそ選ばれしものだ」妖精の魔法と人間の愛のあいだで少女の心はゆれる。

 サマー・キングは娘の前にひざまずいた。「この選択は、きみの自由な意思によるものだな? たとえ冬の寒さの危険とひきかえにしても?」
 娘は王――数週間前に恋に落ちたばかりの相手――を見つめた。夢にも思わなかった。まさか自分が愛した男が人間ではないなんて。だが、今、男の肌は輝いている。まるで体の中に揺らめく炎を抱えているかのように。妖しいまでに美しいその男から、目をそらすことができない。「ええ、それがわたしの望みよ」
「わかっているな? もし〝選ばれしもの〟でない場合、きみは体の中にウインタークイーンの冷気を抱えつづけ、次に同じ危険を冒すものが現れるのを待つことになる。そして次の女が現れたら、警告するのだ。ぼくを信用するなと」

ルール#1フェアリーの気をひくな。
ルール#2フェアリーに返事をするな。
ルール#3フェアリーを見つめるな。
 フェアリーを見る力を持つ少女アッシュリンは、現実世界の陰からのぞく彼らの不気味な世界など見えないふりをして生きてきた。
 ところがそんなある日、人間の男の姿をした美しいフェアリーの青年に誘いをかけられる。
 こんなことはじめて。なぜわたしにつきまとうの? 彼らの目的はなに? 
アッシュリンは親友のセスに思い切ってうちあけるのだが……
 人間の恋とフェアリーの魅了の間で揺れるアッシュリンの心……。
 RITA賞YA部門受賞、ローカス賞推薦作品に選ばれたロマンスとファンタジーの見事な融合。
 美しくも妖しいフェアリーの世界と少女の恋を描いた、ロマンティック・ファンタジーの決定版。シリーズ第1弾。
(2009年12月7日/2011年3月7日)

 

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