今月の本の話題

2011.02.07

男装の女剣士と十兵衛が様々な剣豪・流派の謎を解く! 高井忍『柳生十兵衛秘剣考』[2011年2月刊行]

『漂流巌流島』で第2回ミステリーズ!新人賞を受賞し、デビューした高井忍の新作を、文庫書き下ろしでお届けします。
前作では、人使いの荒い監督と、いいように使われる脚本家の2人組が、集めた資料を突き合わせ、あーでもない、こーでもない、と話し合ううちに、目から鱗の歴史の真実が炙りだされる、という一冊でしたが、今回お届けする『柳生十兵衛秘剣考』は、それとはちょっとタッチの違った作品になっています。なぜなら主人公はあの剣豪・柳生十兵衛と女剣士! 彼らが耳にし、目にした事実を元に「あの人って実は……」とか、「この奥義はこういったものでは……」と様々な剣豪やその流派の秘密を解き明かす、というスタイルで展開するお話なのです。内容を少しご紹介します。

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 女だてらに武の道を選んだ毛利玄達。彼女は腐れ縁の柳生十兵衛にちょっかいを出されながらも、諸国を巡り、己の技を磨いている。
 ある日琵琶湖を往き来する渡し舟の上で、無手勝流を名乗る“土佐の卜伝”なる人物と出会った。乗り合わせたほかの乗客にまで迷惑をかける武士を体よくあしらった卜伝に感銘を受けた玄達だが、一体その“卜伝”が何者なのか、十兵衛はどうも見過ごせないようで……。亡くなっていることが既知の塚原卜伝ではない。その息子が三人いるうちの誰かなのか? なぜそこまで十兵衛は彼のことを気にするのか? 
 深甚琉の極意とされる“水鏡”という技について話を聞いた2人は、盥にはった水に向けて刀をふると、離れた場所にいる相手を倒すことができる、という信じがたいその技について思案を巡らせると……。
 真新陰流の奥義“八寸ののべがね”。並み居る強豪を打ち破ってきたこの技を持って宮本武蔵に挑もうとした猛者がいたが、一体それはどんな技だったのか……。
 そして講談などでは四十八人ともいわれる、洛東粟田口で起きた十兵衛の十二人斬りの真相とは……。

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 いかがでしょうか。時代小説ファンなら「お!」と思う人物たちの名前もたくさん登場しますので、 ミステリファンだけでなく、時代小説に触れたい方にも是非オススメです。時代物好きの方はお気づきかもしれませんが、柳生十兵衛の使う「新陰流」という流派には、奥義はございません。タイトルの「秘剣」が指すのは、十兵衛の解き明かす他の流派の秘太刀です。
 解説は細谷正充さん。味わいがいのある四編を収録した一冊を、どうぞお楽しみください。
(2011年2月7日)

 

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