今月の本の話題

2010.12.06

名探偵ジャーヴァス・フェン教授登場 エドマンド・クリスピン『愛は血を流して横たわる』[2010年12月]

 40過ぎの、すらりと背の高い中年男。愛嬌と鋭さを具えたアイスブルーの目に、さっぱりとした血色のよい顔立ち、念入りに水で撫でつけた鳶色の髪はなぜか頭頂部でぴんと突っ立っている。そして愛車は真っ赤な小型スポーツカー〈リリイ・クリスティン3世号〉――どことなくピーター・ウィムジイ卿を彷彿とさせるこの男性はジャーヴァス・フェン、オックスフォード大学の教授にしてアマチュア名探偵です。
 ジョン・ディクスン・カーに私淑して探偵小説を書き始めたという、英国〈新本格〉派を代表する作家・エドマンド・クリスピンが創造した、個性豊かで愛すべき名探偵の事件簿が、この度初めて創元推理文庫に収録されることになりました。

 カスタヴェンフォード校の終業式を目前に連続して起きる、実験室からの盗難、女子生徒の失踪、そして教師二人が被害者となった殺人事件。来賓として訪れていたフェン教授は、困り果てていた校長から助力を求められますが、翌日村はずれの田舎家でまたもや殺人が……。これぞ英国ミステリ!という入り組んだ事件の謎、そして鋭い推理を所々で披露しながらも、どこかお茶目な魅力を漂わせるフェン教授。黄金期の香気漂う傑作ミステリをご堪能下さい。

*追記 ちなみに、牧歌的(?)な雰囲気が漂う内容に比してサスペンスフルなタイトルと思われる方もいらっしゃると思いますが、本書の原題はLove Lies Bleeding――被害者の一人の姓(Love)と掛けてあるタイトルなのです。実は他にも意味が込められているのですが……詳しくは是非本書をお手にとってご確認下さい。

(2010年12月6日)

 

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