今月の本の話題

2010.05.07

女王クリスティも感嘆した伝説的デビュー作 D・M・ディヴァイン『兄の殺人者』[2010年5月]

お待たせいたしました。それぞれ刊行年の年末ミステリーベストで高く評価された、英国探偵小説の名手D・M・ディヴァインの本邦初訳作『悪魔はすぐそこに』『ウォリス家の殺人』『災厄の紳士』の三冊に続き、ついにデビュー作『兄の殺人者』が創元推理文庫より復活します。
1961年、英国の出版社がおこなった探偵小説コンクールに投じられた作品で、審査員だったアガサ・クリスティが「最後までわたしが読んで楽しめた、極めて面白い犯罪小説」と絶賛したという逸話のある、まさに驚異のデビュー作です。

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霧の夜、弁護士事務所の共同経営者である兄オリバーから急な呼び出しを受けたサイモンは、やむなく戻ったオフィスで兄の死体を発見する。才気に富んだ有能な人物であったが、その傲慢さによって多くの敵を作っていたオリバーは、殺される理由に事欠かなかった。そして捜査の過程で暴かれた、兄の意外な「秘密」にサイモンは衝撃を受ける。オリバーは、本当は卑劣な犯罪者だったのか? 警察の見解に納得できないサイモンは、法律事務所の仲間達の助力を得て、自ら調査に乗り出すが……

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興味はあるけれど、やっぱり刊行順に読まないと駄目? いえいえ、じつはディヴァインに限ってそんなことはありません。彼の作品の特徴として、シリーズ探偵の不在がよく挙げられますが、それは翻って言えば、どの作品から読んでも問題なく楽しめると言うことです。
どれから手に取ればいいかわからない、ということであれば、まずは本作『兄の殺人者』をお勧めいたします。著作の中でも比較的短い点と、推理小説の女王クリスティのお墨付きということで、ディヴァイン入門書として最適ではないかと思います。

この後には、シリアルキラーによる犯罪を扱った屈指の傑作『五番目のコード』の復刊と、本邦初紹介となるSunk Without Trace(2011年刊行予定)の紹介が控えています。お楽しみに!

(2010年5月7日)

 


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