今月の本の話題

2010.03.05

兄妹、介護の仕事を手伝う ジル・チャーチル『君を想いて』[2010年3月]

元・上流階級の若き兄妹を主人公に
1930年代のアメリカを生き生きと描く
《グレイス&フェイヴァー》シリーズ第5弾


 不況、不況と言われつづけてだいぶ経つ昨今ですが、本書『君を想いて』が第5弾となる《グレイス&フェイヴァー》シリーズも、大恐慌まっただ中のアメリカが舞台とあって、折に触れシビアな暮らしの描写が顔をのぞかせます。

 とはいえ、本書に登場する人々は、決して明るさを失っていません。自分なりの工夫を重ねて、苦しい家計をやりくりしたり、お互いに助けあったりして、たくましく生きています。
 今回、ブルースター兄妹が手伝うことになる養護ホームも、看護の資格を持つ地元の富裕な婦人が、自宅を開放して運営しているもの。常勤の看護婦が急な病に倒れたので、兄妹はこまごました雑用をこなすべく、慣れない力仕事に精を出すことになります。
 しかし、その養護ホームでふたりが働きはじめたまさにその日、またしても殺人事件が起きてしまいます。殺されたのは、入所者のひとりで危篤状態だった老人。余命数時間から一日と思われていた老人を、誰がどうして殺したのか?

 ……というミステリとしての部分はもちろんのこと、若い兄妹の成長物語としても、1930年代のアメリカを舞台にした歴史読みものとしても楽しめる、お得な一冊です。どうぞお楽しみに。
 ジル・チャーチル『君を想いて』は、3月11日発売予定です。

※  ※  ※  ※

 近所の養護ホームで、雑務を手伝うことになったリリーとロバートの兄妹。その初日、体力勝負の仕事に苦戦中、昏睡状態になった入所者の老人が殺される。余命数時間の老人を、誰がなぜ? 捜査はウォーカー署長に任せ、養護ホームの改装に夢中のロバートとは違い、リリーは事件の行方に興味津々なのだが……。
 1930年代のアメリカ、大恐慌下でもたくましく生きる人々を描いた、人気シリーズ第5弾登場。


(2010年3月5日)

 

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