今月の本の話題
2010.02.05
圧倒的なスケールの異世界ファンタジー ロビン・ホブ〈道化の使命〉『黄金の狩人』[2010年1月]
●『黄金の狩人』(2010年1月刊)
六公国を危機に陥れた外島人の“赤い船団”が撃退されて15年。 真の王ヴェリティが去って後、王妃ケトリッケンが一粒種の王子を守り育てながら、なんとか平穏に国を治めてきた。
一方、ヴェリティの兄であった第一王子シヴァルリの庶子フィッツ。暗殺者の弟子にして、今やファーシーア一族の不思議な力である〈技〉を継承する数少ない生き残りとなったフィッツは、〈気〉の絆を結んだ狼と、訳あって育てている孤児の少年と共に、隠遁生活を送っていた。
そんなフィッツのもとに、かつての暗殺者の師シェイドが訪ねてきた。
ファーシーア一族の影として、長年国王の暗殺者だったシェイドは、今では王妃の顧問官として、王妃を支えて表舞台で活躍していた。
シェイドはフィッツに、宮廷に戻って若き王子に一族に伝わる〈技〉の使い方を教えてくれるように頼みにきたのだ。ヴェリティのいない今、教えられるのはフィッツだけだ。しかし自身の〈技〉と知識に自信のないフィッツが承知するはずもなかった。
ところが訪問者はシェイドだけでは終わらなかった。次にフィッツのもとを訪れたのは、豪奢な身なりの見知らぬ若者。
贅沢な服に身を包み、黄金色の肌に黄金の髪をした美しい若者。すっかり変わってはいたが、それは懐かしい道化だった。フィッツの祖父にあたる王に仕えていた不思議な白い道化。会わないでいた15年の間に、いったいなにがあったのか。
そして自らを〈白の予言者〉と称し、フィッツを“触媒と呼ぶ道化の予言を証明するかのように、フィッツの周囲に変化の嵐が吹き始める。
外諸島との和平のための結婚を目前にして行方不明になった、若き王子の捜索に招喚されたのだ。
黄金卿こと道化の従僕と偽ってのフィッツの探索行が始まる。
フィッツは、六公国の希望をになう若き王子を探し出し連れ帰ることができるのか?
〈道化の使命〉三部作堂々開幕。
〈ファーシーアの一族〉をお読みでない方のために。
●『騎士の息子』上下
物語の舞台は中世のヨーロッパを思わせる異世界。そこに〈技〉とよばれる、遠くを見、互いに意志を疎通させる不思議な力を持つ遠視者(ファーシーア)一族が治める六公国がある。沿岸に位置するベアルンズ、バック、リッポン、ショークスの四つの公国と、内陸のティルス、ファロウの二つの公国で成り立ち、そのうえに牡鹿城(バックキープ)に居をかまえる遠視者一族の王が君臨している。
その国で世継ぎの王子の私生児として生まれた一人の男の子がいた。出自ゆえに庶子(フィッツ)と呼ばれるその子は母親の記憶をもたず、父は彼の存在ゆえに世継ぎの王子の地位を捨て、息子の顔を見ぬままに隠棲してしまう。顧みられることなく、犬や馬を友として厩舎で育てられていたフィッツだが、やがて祖父である国王の命令で密かに暗殺者としての教育を受けることになる。
折しも長年の宿敵である外島人の赤い船団が、六公国の沿岸地域に頻繁に襲撃をしかけてくるようになった。赤い船団の捕虜にされた人々は、人間としてのいかなる感情も知性も失い、獣以下の存在となり果てて家族のもとに帰される。終わりのない襲撃と同胞を殺さねばならないという苦悩に公国は次第に疲弊してゆく。
そんな六公国未曾有の危機を前に、これまで一部の王族以外には閉ざされていた〈技〉の訓練が再開されることになった。王子の庶子であるフィッツもようやく参加を許されるが、〈技〉の長はなぜか彼にむき出しの敵意をぶつけてきた。
王家の影として生きる宿命を背負った少年の成長と試練。魔法と陰謀が渦巻く、壮大な異世界ファンタジーここに開幕!
山の王国での出来事ですっかり身体を壊してしまったフィッツ。思うようにならない自分の身体に若いフィッツはいらだちを隠せない。このままでは自分は暗殺者としても、王の臣下としても使いものにならない役立たずになってしまう……。
しかもフィッツにはひそかに心に想う女性がいた。かつてバックキープの町で一緒に遊んだ、幼なじみの蝋燭店の娘モリーだ。
フィッツはやっとの思いでバックキープの城に戻った。そして思いがけないことに、そこでモリーに再会する。だが王家の私生児と一介の侍女、周囲がふたりの仲を認めるわけはなかった。
一方、六公国を取り巻く情勢も厳しさを増していた。赤い船団の襲撃は相変わらず続き、溶化される者も増える一方だった。継ぎの王ヴェリティは赤い船団を迎え撃つ船の建造に力を尽くし、同時にもてる〈技〉のすべてを注ぎ込んで襲撃を未然に防ごうとする。そんななか山の王国からひとり嫁いできた王妃ケトリッケンは、慣れない宮廷での暮らしに孤独を深めていた。
どれほど手をつくしても、自分の力では赤い船団の襲撃を防ぎきれないと知ったヴェリティは、伝説の「旧きもの」を探し出し助力を乞いにいく決心をかためる。
遠い昔、やはり外島人の襲撃に苦境に陥ったウィズダム王が、伝説の旧きものを探しにいき、彼らの助力を得て侵略者を追い払ったという。ヴェリティは藁にもすがる思いで、沿岸地帯が冬に閉ざされ、襲撃が途絶えている間に旧きものを探し旅立つのだった。
ヴェリティの出立を密かに喜んでいるものがいた。第三王子リーガルである。王は体調が優れず、継ぎの王は不在、留守を託された王妃はまだ異国の宮廷に慣れていない。まさに好機到来。
フィッツはリーガルの陰謀から六公国を、そして自分自身の身を守る事ができるのか?
『騎士(シヴァルリ)の息子』ではノージーとスミシーという、フィッツと絆を結んだ犬たちの存在が光っていましたが、今回は狼が登場。
フィッツがバックキープの町の市場にある動物商の店で出会ったチビ狼。狭い檻のなかに閉じこめられ、やせ衰え、人間に対する凶暴な怒りではち切れんばかりの幼い狼、フィッツはそんな狼に自分の姿を重ね合わせてしまいます。そしてどうしても見捨てることができず、もうやるまいと決心していたにもかかわらず再び禁じられた〈気〉の絆を結んでしまうのです。このチビ狼とフィッツの深い絆は、今後の物語の展開に深く関わってきます。
もうひとつ、忘れてはならないのが道化の存在。謎めいたことしか言わず、いつもフィッツをいらいらさせますが、フィッツを“触媒”と呼び、自分の運命は彼に深く結びついているのだと主張します。まだまだ謎の多い人物ですが、今後のキイ・パーソンになってくることは間違いなし。チビ狼とともにご注目ください。
王位に野心を燃やす叔父のリーガルに捕らえられたフィッツ。命だけはなんとかとりとめたものの、払った犠牲はあまりに大きかった。ブリッチとシェイドをのぞいて、フィッツが生きていることを知るものはいないのだ。
一方、バックキープでは、シュールード王は殺され、旧きものを求めて旅立った正統な継ぎの王ヴェリティは行方が知れない。身の危険を感じた継ぎの王妃ケトリッケンは、間一髪でリーガルの魔手を逃れて山の王国に旅立ったものの、付き従うことができたのは道化ただひとり。王位は簒奪者の手におち、沿岸諸公国は見捨てられた。
フィッツは、死んだと思われていることを利用してリーガルに復讐すべく、絆を結んだ狼だけを伴い、単身内陸の地を目指す。だが、そこに待ち受けていたのは、リーガルと〈技〉をもったリーガルの連だった。
リーガルの罠からフィッツを救ったのは、なんと行方不明となっている正統の王ヴェリティの、圧倒的な〈技〉の力だった。
「わがもとに来よ」ヴェリティの呼びかけに、すべてを投げ出してこたえようとするフィッツ。だが、王はどこにいるのか?
一方、フィッツを捨てたはずの恋人モリーは、密かに彼の娘を産んでいた。このままではファーシーアの血をひく自分の幼い娘が、後継者争いに巻き込まれる。六公国に対する義務と我が娘への愛情の板挟みに苦悩するフィッツ。
リーガルの魔手が迫るなか、フィッツは果たして王を見つけ、六公国を救うことができるのだろうか? 圧倒的なスケールと、驚愕の結末。
〈ファーシーアの一族〉は、ついにクライマックスへ。
六公国を危機に陥れた外島人の“赤い船団”が撃退されて15年。 真の王ヴェリティが去って後、王妃ケトリッケンが一粒種の王子を守り育てながら、なんとか平穏に国を治めてきた。
一方、ヴェリティの兄であった第一王子シヴァルリの庶子フィッツ。暗殺者の弟子にして、今やファーシーア一族の不思議な力である〈技〉を継承する数少ない生き残りとなったフィッツは、〈気〉の絆を結んだ狼と、訳あって育てている孤児の少年と共に、隠遁生活を送っていた。
そんなフィッツのもとに、かつての暗殺者の師シェイドが訪ねてきた。
ファーシーア一族の影として、長年国王の暗殺者だったシェイドは、今では王妃の顧問官として、王妃を支えて表舞台で活躍していた。
シェイドはフィッツに、宮廷に戻って若き王子に一族に伝わる〈技〉の使い方を教えてくれるように頼みにきたのだ。ヴェリティのいない今、教えられるのはフィッツだけだ。しかし自身の〈技〉と知識に自信のないフィッツが承知するはずもなかった。
ところが訪問者はシェイドだけでは終わらなかった。次にフィッツのもとを訪れたのは、豪奢な身なりの見知らぬ若者。
贅沢な服に身を包み、黄金色の肌に黄金の髪をした美しい若者。すっかり変わってはいたが、それは懐かしい道化だった。フィッツの祖父にあたる王に仕えていた不思議な白い道化。会わないでいた15年の間に、いったいなにがあったのか。
そして自らを〈白の予言者〉と称し、フィッツを“触媒と呼ぶ道化の予言を証明するかのように、フィッツの周囲に変化の嵐が吹き始める。
外諸島との和平のための結婚を目前にして行方不明になった、若き王子の捜索に招喚されたのだ。
黄金卿こと道化の従僕と偽ってのフィッツの探索行が始まる。
フィッツは、六公国の希望をになう若き王子を探し出し連れ帰ることができるのか?
〈道化の使命〉三部作堂々開幕。
〈ファーシーアの一族〉をお読みでない方のために。
●『騎士の息子』上下
物語の舞台は中世のヨーロッパを思わせる異世界。そこに〈技〉とよばれる、遠くを見、互いに意志を疎通させる不思議な力を持つ遠視者(ファーシーア)一族が治める六公国がある。沿岸に位置するベアルンズ、バック、リッポン、ショークスの四つの公国と、内陸のティルス、ファロウの二つの公国で成り立ち、そのうえに牡鹿城(バックキープ)に居をかまえる遠視者一族の王が君臨している。
その国で世継ぎの王子の私生児として生まれた一人の男の子がいた。出自ゆえに庶子(フィッツ)と呼ばれるその子は母親の記憶をもたず、父は彼の存在ゆえに世継ぎの王子の地位を捨て、息子の顔を見ぬままに隠棲してしまう。顧みられることなく、犬や馬を友として厩舎で育てられていたフィッツだが、やがて祖父である国王の命令で密かに暗殺者としての教育を受けることになる。
折しも長年の宿敵である外島人の赤い船団が、六公国の沿岸地域に頻繁に襲撃をしかけてくるようになった。赤い船団の捕虜にされた人々は、人間としてのいかなる感情も知性も失い、獣以下の存在となり果てて家族のもとに帰される。終わりのない襲撃と同胞を殺さねばならないという苦悩に公国は次第に疲弊してゆく。
そんな六公国未曾有の危機を前に、これまで一部の王族以外には閉ざされていた〈技〉の訓練が再開されることになった。王子の庶子であるフィッツもようやく参加を許されるが、〈技〉の長はなぜか彼にむき出しの敵意をぶつけてきた。
王家の影として生きる宿命を背負った少年の成長と試練。魔法と陰謀が渦巻く、壮大な異世界ファンタジーここに開幕!
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●『帝王の陰謀』上下山の王国での出来事ですっかり身体を壊してしまったフィッツ。思うようにならない自分の身体に若いフィッツはいらだちを隠せない。このままでは自分は暗殺者としても、王の臣下としても使いものにならない役立たずになってしまう……。
しかもフィッツにはひそかに心に想う女性がいた。かつてバックキープの町で一緒に遊んだ、幼なじみの蝋燭店の娘モリーだ。
フィッツはやっとの思いでバックキープの城に戻った。そして思いがけないことに、そこでモリーに再会する。だが王家の私生児と一介の侍女、周囲がふたりの仲を認めるわけはなかった。
一方、六公国を取り巻く情勢も厳しさを増していた。赤い船団の襲撃は相変わらず続き、溶化される者も増える一方だった。継ぎの王ヴェリティは赤い船団を迎え撃つ船の建造に力を尽くし、同時にもてる〈技〉のすべてを注ぎ込んで襲撃を未然に防ごうとする。そんななか山の王国からひとり嫁いできた王妃ケトリッケンは、慣れない宮廷での暮らしに孤独を深めていた。
どれほど手をつくしても、自分の力では赤い船団の襲撃を防ぎきれないと知ったヴェリティは、伝説の「旧きもの」を探し出し助力を乞いにいく決心をかためる。
遠い昔、やはり外島人の襲撃に苦境に陥ったウィズダム王が、伝説の旧きものを探しにいき、彼らの助力を得て侵略者を追い払ったという。ヴェリティは藁にもすがる思いで、沿岸地帯が冬に閉ざされ、襲撃が途絶えている間に旧きものを探し旅立つのだった。
ヴェリティの出立を密かに喜んでいるものがいた。第三王子リーガルである。王は体調が優れず、継ぎの王は不在、留守を託された王妃はまだ異国の宮廷に慣れていない。まさに好機到来。
フィッツはリーガルの陰謀から六公国を、そして自分自身の身を守る事ができるのか?
『騎士(シヴァルリ)の息子』ではノージーとスミシーという、フィッツと絆を結んだ犬たちの存在が光っていましたが、今回は狼が登場。
フィッツがバックキープの町の市場にある動物商の店で出会ったチビ狼。狭い檻のなかに閉じこめられ、やせ衰え、人間に対する凶暴な怒りではち切れんばかりの幼い狼、フィッツはそんな狼に自分の姿を重ね合わせてしまいます。そしてどうしても見捨てることができず、もうやるまいと決心していたにもかかわらず再び禁じられた〈気〉の絆を結んでしまうのです。このチビ狼とフィッツの深い絆は、今後の物語の展開に深く関わってきます。
もうひとつ、忘れてはならないのが道化の存在。謎めいたことしか言わず、いつもフィッツをいらいらさせますが、フィッツを“触媒”と呼び、自分の運命は彼に深く結びついているのだと主張します。まだまだ謎の多い人物ですが、今後のキイ・パーソンになってくることは間違いなし。チビ狼とともにご注目ください。
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●『真実(ヴェリティ)の帰還』上下 王位に野心を燃やす叔父のリーガルに捕らえられたフィッツ。命だけはなんとかとりとめたものの、払った犠牲はあまりに大きかった。ブリッチとシェイドをのぞいて、フィッツが生きていることを知るものはいないのだ。
一方、バックキープでは、シュールード王は殺され、旧きものを求めて旅立った正統な継ぎの王ヴェリティは行方が知れない。身の危険を感じた継ぎの王妃ケトリッケンは、間一髪でリーガルの魔手を逃れて山の王国に旅立ったものの、付き従うことができたのは道化ただひとり。王位は簒奪者の手におち、沿岸諸公国は見捨てられた。
フィッツは、死んだと思われていることを利用してリーガルに復讐すべく、絆を結んだ狼だけを伴い、単身内陸の地を目指す。だが、そこに待ち受けていたのは、リーガルと〈技〉をもったリーガルの連だった。
リーガルの罠からフィッツを救ったのは、なんと行方不明となっている正統の王ヴェリティの、圧倒的な〈技〉の力だった。
「わがもとに来よ」ヴェリティの呼びかけに、すべてを投げ出してこたえようとするフィッツ。だが、王はどこにいるのか?
一方、フィッツを捨てたはずの恋人モリーは、密かに彼の娘を産んでいた。このままではファーシーアの血をひく自分の幼い娘が、後継者争いに巻き込まれる。六公国に対する義務と我が娘への愛情の板挟みに苦悩するフィッツ。
リーガルの魔手が迫るなか、フィッツは果たして王を見つけ、六公国を救うことができるのだろうか? 圧倒的なスケールと、驚愕の結末。
〈ファーシーアの一族〉は、ついにクライマックスへ。
(2010年2月5日)
- バックナンバー
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