今月の本の話題

2010.01.27

11人の作家が描く架空の街の謎物語 競作アンソロジー『蝦蟇倉(がまくら)市事件』[2010年1月・2月刊行]

1970年代生まれの11人の作家が描く、架空の街の謎物語
謎と犯罪に魅せられた街、蝦蟇倉へようこそ――


『蝦蟇倉市事件』特設ページはこちらです。

「同じ街を舞台に競作してみませんか」
 たしかそんな風に依頼をしたと思う。一から参加者全員で街を作り上げ、その作られた街を舞台に中編を書いてもらうアンソロジー。書いていただく作家さんたちもみなお若い1970年代生まれ。面白そうだと二つ返事でみなさん引き受けてくれた。“街企画”、そんな名前で呼びながら、このアンソロジー企画は進んでいった。
 初めに原稿を仕上げてくださったのは、道尾秀介先生。描かれている話も世界もとても魅力的で、一気に参加者陣のテンションがあがったのを覚えている。その後参加者たちと会議室にこもって街の細かな設定を決めて、大雑把な街の全体地図を作っていった。
 そして道尾先生の作品に触発された先生方が次々と原稿を送ってきた。
「年間平均15件の不可能犯罪が起こる街にしよう」
「じゃあ不可能犯罪専門の部署が警察にあってもいいのではないか」
「不可能犯罪が好きすぎて、ディクスン・カーの墓を暴いてこの街に持って帰ってきてしまった人がいるというのはどうか」
「市長を元プロレスラーのとんでもない設定にしたい」
「銘菓は蛙の卵のようなビジュアルのものにしては」
などなど個性的な作風の11人の作家が設定を追加して、どんどんとこの架空の街・蝦蟇倉(がまくら)はにぎやかになっていった。

 2010年1月末に刊行される第1巻には、道尾秀介先生・伊坂幸太郎先生・大山誠一郎先生・福田栄一先生・伯方雪日先生の作品が収録されている。
 道尾先生の作品は掛け値なしに素晴らしいリドルストーリー。蝦蟇倉市のおおもとは道尾先生が作ってくださったといっても過言ではない。ぜひ一番初めにお読みいただきたい。
 伊坂先生の作品は道尾先生の作品のアンサーストーリーとなっているので、あわせて読んでいただきたい。
 大山先生の作品は本格ミステリ、特に不可能犯罪ものへの憧憬に満ちた意欲的一本。
 福田先生の作品は、その作風にたがわないやわらかな読み心地の爽快なお話だ。
 伯方先生は格闘技への愛に満ちた、仰天の作品を。ちなみにタイトルの「Gカップ」とは、女性の胸のサイズのことではないのであしからず。

 2010年2月末に発売される第2巻には、北山猛邦先生・桜坂洋先生・村崎友先生・越谷オサム先生・秋月涼介先生・米澤穂信先生の6作品を収録。
 北山先生はラストに浮かび上がる情景がとても美しい、抒情的な作品。
 桜坂先生はいままでの彼の作風から飛び出した、非常に挑戦的なミステリ。
 村崎先生の作品は、自宅に本を山ほど抱える人間がより一層頭を悩ませる難問だ。
 越谷先生は青春小説の苦さをふんだんに盛り込んだ、ビターなミステリ。
 秋月先生は人の盲点をうまく突いた、本格ミステリらしい刺激的な作品。
 米澤先生は『さよなら妖精』の続編にあたる大傑作を書いてくださった。

 広がりすぎた設定を地図にまとめてくださったイラストレーターの佐久間真人先生は、カバーにもちょっとした仕掛けを用意している。実際手に取られたら、1巻目と2巻目を並べて、さらによくよく注意してみてほしい。きっとあることに気づくだろう。

 世界を共有し、あの作品に登場した人物・建物が、この作品やその作品にも! という楽しみと、お祭り感にあふれた『蝦蟇倉市事件』を、どうぞ余すところなく楽しんでいただきたい。

(2010年1月27日)


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